ブルックナー 交響曲第8番 朝比奈隆 大阪フィル 1994年 キャニオン SACD

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朝比奈 ブルックナー 交響曲第8番

朝比奈さんの生誕100年を記念して、再発の企画がたくさんある。まずこのキャニオンのブルックナーとベートーヴェンのSACD、続いてエクストンのブルックナーのSACD。そのほか、CDのハイパーマスタリング盤で、キングのものがたくさん。

というわけで、まずキャニオンのブルックナーを1つ買ってみた。8番である。1994年、サントリーホールでの空前絶後といわれた演奏で、この演奏会は、生できいている。たしかにすごかったという記憶がある。

最初、レギュラーのCDで出て、それから廉価盤でHDCDで出て、今度は、フルプライスでのハイブリッドSACDである。同じ演奏を、ことなるフォーマットできくことができる。4番は、さらにアートン盤があった。

朝比奈さんのブル8は、この盤を取り出して聴くことは意外と少ない。まず、名古屋の演奏、それから、東京の最後の演奏となったエクストン盤、それとN響のものが多いだろうか。 しかし、今回久しぶりに聴いてみて、それはそれはすばらしい演奏だと認識をあらたにした。

音は、やはりSACDで、非常にレンジが広く、空間再現力はすばらしい。それよりも、ものすごいエネルギー感だ。こんなに、ど迫力のある演奏だったか、とあらためて思う。最晩年のものと比べると、ものすごく力強い。

楽譜は、ハース版である。朝比奈さんは、最初は、ノヴァーク版であったが、名古屋大学に客演したときに、ハース版を知り、それからハース一辺倒である。

朝比奈さんにとって、この第8番は、ブルックナーの交響曲のなかでも、演奏頻度が非常に多く、それだけ血となり肉となっているから、その共感度がなみはずれている。それだけでなく大阪フィルも数多くこなしているから、技術的にも洗練度が高い。
かなりたくさんのCDがでていて、どれも非常に完成度が高い。最初のジャンジャンのものから、最後のサントリーのものまで、どれもすごい演奏である。このCDは、1990年代の最高の演奏の記録である。

さて、朝比奈さんが登場して拍手で迎えるところから始まる。

第1楽章。最初からいきなり完成度の高い音ではじまる。とても洗練された響きだけでなく、ものすごく豊かで歌こころがある。何とすばらしい音楽だ。ほかの演奏では、けっこうゴツゴツした演奏になるが、さすがにこの曲はよくとりあげているからか、洗練度が違う。音も見通しがよい。勢いが違う。流れもある。実にすごい演奏だ。

第2楽章。まず勢いがある。けっこうゴツゴツしているが、ぐいぐい進む。洗練度も高い。チェロも旋律は流れるようには弾かない。そういうボーイングをしている。トリオは、きちりとしているが、ヴァイオリンの歌がすばらしい。

第3楽章、ブルックナーのもっとも感動的な音楽だと思う。かなり大きめの音でしっかりと弾きながらはじまる。太い、そしてなめらかではないが、非常に心のこもった熱いものを感じる。もう涙涙の連続である。とくに、5分41秒からはじまるチェロの旋律で、至福のときを迎える。そして、つづき、この圧倒的な音響のなかで、しばしわれを忘れる。

第4楽章、エネルギー全開ではじまる。足取りがしっかりした、堂々とした音楽。マッシブな力と、心のこもったあたたかい音楽が交差する。この演奏会、私は実際に聴いているが、ここになると、いつまでも終わってほしくない、という思いが募った。この幸福感に永遠にひたっていたい、と思ったものである。

最後、圧倒的な迫力をもっておわるが、拍手がちょっと間をあいて出てきている。拍手が何と13分も録音されている。聖フロリアン盤につづく悪乗りのようにも思えるが、私はこれを実体験しているので、懐かしささえ覚える。

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