ブルックナー 交響曲第8番 ハース版 朝比奈隆 大阪フィル 1976年 ジャンジャン 


朝比奈さんのブルックナーとして、最初に発売された演奏です。衝撃の演奏でした。

ディスク・ジャンジャンのもので、これだけは、単独発売されました。ほかの作品は、セットでしか発売されませんでした。ただし、CDの時代になってからは、セットだけです。

2枚組4800円だったと記憶しています。

ジャンジャン盤の経緯については、別途書きましたので、こちらを参照してください。

これが、すべての始まりです。

レコード史上に燦然と輝く大傑作です。

まずエピソードを。

私の高校のときからの友人ですが、すごくブルックナーが好きでいろいろ聴いていた人なんですが、あるとき、FM大阪のリクエスト番組を聴いたのですが、最初から聴いていなかったので、演奏者がわからなかったんです。リクエスト番組だから、番組表にものっていません。

曲は、ブルックナーの交響曲第8番でした。それで途中から聴いたのですが、何てすばらしい演奏なんだろう、と思ってききほれていたんだそうです。ひょっとしたら、これは史上最高の演奏といえるのではないか。誰の演奏だろう。ドイツの名門だろうが・・・。

それで、最後のアナウンスをききました。朝比奈隆指揮大阪フィルの演奏です、との説明に彼は腰をぬかしたそうです。彼は、それまで、大阪フィルの生演奏もよく聴いているのですが、それでもわからなかった、ものすごく洗練された響きがするのです。それ以上に解釈がすばらしいのです。

これが、ジャンジャンの演奏です。

ディスクジャンジャンはメジャーレーベルではないので、レコード芸術ほか、この演奏の批評は出ていません。このレコードを扱っていたレコード屋もすくなかったのです。

私は、大阪フィルの事務局で買いました。先日、ある音楽会が、ジャンジャン跡地であったのですが、そこに、朝比奈さんの演奏によく来ていた人がいました。お互い顔はわかっているのですが、初めていっしょに飲みに行きました。彼は、ジャンジャンで買ったそうです。それ以来、ジャンジャンという場所は、朝比奈ブルックナーファンとしては聖地といっていいのです。私がそう言うと、彼もよくぞ言ってくれました、と返してきました。

この全集の演奏レベルは、けっこう下手なのもあるのですが、この8番は、けっこう洗練された響きがしています。おどろくべきハイレベルの演奏です。朝比奈さんの第8の録音はかなりたくさんありますが、これが一番いい、という人もいると思います。

この演奏は、私は録音にたちあっています。最初の録音 が、ジャンジャンの高橋氏が気に入らなかったらしく、再録音をしたのです。それで、どうも、朝比奈さんが、観客がいないと盛り上がらないということで、すこしですが、いれたのです。1976年8月23日のことでした。

朝比奈さんもオケもラフな格好で演奏していました。

テイクが始まると、一気にとってしまい、解散してしまったので、とりなおしなしの一発勝負のレコーディングになりました。朝比奈さんが満足してしまったようで、修正ができることをわすれてしまったそうです。あとで事務局の人がそういっていました。

私は、1974年に大阪フィルの定期演奏会を聴いていますが、そのときとくらべ、この演奏、とんでもなくすばらしく完成度が高いという印象を持ちました。会場にいた人、みなそう思ったと思います。

さて、この演奏、今聴きますと、当時すでに、これだけすごい演奏だったのだと改めて思います。朝比奈さんの第8番の原点ともいえますが、数ある演奏のなかで、もっとも凝縮された熱っぽさがあります。

しかし、懐かしい思いです。これを聴くと。発売当初、毎日のように聴いていました。

楽譜は、ハース版とノヴァーク版の折衷ということである。

まず、オケの技術ですが、この当時は、今と比べ落ちるとは思いますが、とくに不満はありません。この第8の場合、この全集のなかでも、音が洗練されています。金管楽器など、ピッチがあやしいということもいえますが。最晩年にいたるまで、スタイルはほとんど変わっていません。この時期で、スタイルが確立されているといえます。

第1楽章、いきなり絶好調です。とくに、オーケストラの音が、後年のものとくらべ、けっこう暗い音ですが、非常に力があり、迫力満点です。表現は、インテンポですが、後年のものとくらべ、すこし甘いところもありますが、非常に熱のこもった凄みのある演奏です。最後のところ、しずかになって、ゆっくり終わるのですが、こういうやり方、あとのにはないですね。ちょっと迫力不足にはなります。

第2楽章、かなり快適なテンポで進みます。音がぐいぐい進む点では、一番迫力のある演奏かもしれません。ただ、後年とくらべ、やや平板なところもありますが、あまり気になりません。

第3楽章、第8番の録音のなかでは、一番ストレートというか、あんまり感傷的な表情もなく、あっさりしている。後年のものとくらべて、デリカシーは不足する。ここが違うといえば違う。力感あふれ、朗々としているが、表情が比較的静か。といっても、晩年のものと比べると、という意味で。しかし、後半になると、なかなか熱いものを感じさせる。

第4楽章、すごい推進力のある演奏。ぐいぐい進む。ここも、後年のものとくらべ、音色は比較的単調です。ただぐいぐい進む力はなかなかすばらしいものがあります。

・交響曲第8番ハ短調 WAB.108(ハース版)[84:26]
 第1楽章:16:00
 第2楽章:16:50
 第3楽章:26:59
 第4楽章:24:37
 拍手:4:57
 録音時期:1976年8月23日
 録音場所:神戸文化ホール
 録音方式:ステレオ(公開セッション)

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