ブルックナー 交響曲第8番 朝比奈隆 大阪フィル カテドラル1回目 1980

この演奏会について、LPが出たときに、カメラマン木之下晃氏は、「神が祝福を与えた」と書いた。今回のCDにも、それは再録されている。

私は、この日のチケットを持っていながら、会社の送別会があって、かけつけたときは、スタンディングオヴェーションのさなか。これだけ、みんなが立って拍手したのを見たのは初めてだった。その後のブルックナー協会の総会で、私は世界一不幸な人と言われた。

当日、朝比奈さんは、会心の演奏だったらしくご機嫌だった。このシリーズ、東京のオケがどこもすばらしく、大フィルだいじょうぶか、と思ったが、さすが大フィルだ、と熱っぽく語っていた。

朝比奈さんのブルックナーの8番の超絶的名演奏というのは、かなりたくさんあって、この時点ではこれがピークだろう。私が聴いた最初の8番の超絶的名演は、ジャンジャンの公開録音。そのつぎは、私はナマを聴いていないがこの演奏だろう。次は、1994年のサントリーホールでの東京定期。それから1997年のNHK交響楽団との演奏(録音は初日のものしかないが、私は2日目がお気に入りだった)。1998年の東京都交響楽団との演奏(初日はダメだったが、2日目はもうすごい演奏だった。録音はこの2日目が中心)。そして、最後の大阪フィルの2001年の一連の演奏。2001年は、数回やっていて、7月のサントリーは平日だったので聴いていないが、名古屋のはもう完璧だった。ほかに大阪でも、シンフォニーホールのシリーズとフェスの定期演奏会があった。

この演奏は、ビクターのCD全集としては、1983年の方が採用されたので、今回初CD化である。LPでは、このカテドラルのセットのほかに、2枚組みで8番と9番分売された。

さて、この演奏、いけなかった思いがあるので、当時あんまりじっくり聴く気にはならなかったのだが、あらためて聴くと、とくに後半部分の熱っぽさは格別のものがある。

オーケストラの音色は、4番の日本フィルや7番の東京交響楽団と比べると、陰影が深く、さすがにブルックナーをひととおりやったという自信のようなものも感じる。全体的に安定感もあるが、本当に第3楽章よりあとになると、雰囲気がガラっとかわり、ものすごい音響の塊である。その中に身を浸し、究極の幸福感を味わうことができる。これが、教会だから、何かしら宗教じみてくる。たしかに、演奏直後にここについたときに、宗教の儀式のようにも見えた。

第3楽章、第4楽章の8分目くらいのところは、ハース版のフレーズがカットされていて、ノヴァーク版も要素も取り入れている。完全なノヴァーク版というわけでもない。

なお、これには、ハイレゾ音源がある。

今回のセットの4枚目の後半に序曲が入っている。

第8番の強烈なエンディングのあと、拍手がはいっていないのはいいのだが、急に序曲ヘ短調がなってしらけてしまう。どうせなら、第1楽章の前に収録したらいいのに。まあ、知っていれば、機械を止めればいいのだが、第8番の滅多打ちされて、しばらくは動けないほどだから、プログラムするしかないか。

この序曲の演奏は、新日本フィルのもので、第9番が演奏されたときのものである。きわめて丁寧な演奏で、ブルックナー音楽を楽しむことができる。

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ブルックナー 交響曲第7番 朝比奈隆 東京交響楽団 1980年 カテドラル

東京交響楽団との第7番。東京カテドラルでのライブ録音。

今回、タワーレコードの企画ものとして久しぶりに再発されたもの。

これはナマでも聴いているし、LPをもっているので、LPを購入直後も聴いているのだが、ずいぶん久しぶりに聴く。アナログ録音の最後の世代のもので、ものすごく音がよい。この教会の長い残響がきれいに入っている。

これは、聖フロリアンの表現に近い。さすがに残響が長いこともある。晩年の朝比奈さんの第7番は、60分そこそこの演奏が多いのだが、フロリアンやこれは75分ほど要している。

弦楽の表情が最初単調ではあるのだが、だんだん乗ってくる。聖フロリアンよりは、各楽器が良く聞こえる。弦の響きが大阪フィルのものよりもずっと太い。そんなにデリカシーのある表現ではないが、教会の長い響きがそれをうまくカバーしている。あの聖フロリアンの音というのは、まず奇跡と言ってよく、よくもあれだけのデリカシーのある音が当時の大阪フィルから出たものだ、とよく思う。金管のバランスが、聖フロリアンのものよりも、ずっと強い。全体的に音が濃い。

しかし、聴き終わって非常に充実感がある。

この演奏会は、ラストで残響が残っているうちに、拍手がはじまってしまい、朝比奈さんが背中で強い抗議をしていた。「何ということをしてくれるのだ」と言っているように感じたものだ。

この録音では、そこは、リハーサルの音源が使われていて、最後の拍手がない。

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ブルックナー 交響曲第5番 朝比奈隆 東京都交響楽団 1980年 カテドラル

東京カテドラルで行われたブルックナーシリーズの1つ。 ビクターのブルックナー交響曲全集にも入っている演奏である。

私は、この演奏に接して、はじめてブルックナーの第5番に心底感動した。この演奏会のあと数日間、頭の中で、ずっとこの曲がなっていた。それ以前に、ジャンジャンの生も聴いていたが、私のブル5の事始はこれである。

今回、XRCDになって、信じられないくらい音が良くなった。高いのがたまにキズだが。マスターテープにさかのぼってマスタリングしている。ビクターのブルックナー全集の1つになっているもの。

しかし、今聴くと、最晩年のものと比べると、ものすごく表現が几帳面である。東京のオケということもあるだろうが。

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ブルックナー 交響曲第4番 朝比奈隆 日本フィル 1980年 カテドラル

1980年に東京カテドラルで行われた、5つのオーケストラを使ったブルックナーのコンサート。これは梶本音楽事務所の企画だった。この演奏会は、直後にデラックスなLPのセットで発売された。その後、5番、9番はビクターの全集に収録されたが、それ以外については、今回はじめてCD化された。タワーレコードの企画で、4枚で3000円という廉価盤である。1980年というデジタル録音が出る前の、最高のアナログ録音で、びっくりするほど音がよい。これはSACDで聴いてみたいな、と思う。

ジャンジャンの全集直後の、朝比奈さんとしては初期のブルックナー演奏の記録である。まだ、東京の定期演奏会で、当日券が楽に買えた時期。まだ70歳代だ。私も大阪フィルの合唱団で直接お世話になっていて、本人とまだいろいろお話することも多かった時代だ。当時私は社会人2年目。銀行に就職が決まったときに、朝比奈さんにも報告に行った。それはよかった、と喜んでくれた。

このコンサートは、朝比奈さんが、聖フロリアン教会での演奏をやって、日本でも教会でやってみたい希望が、いろいろな方々の尽力で実現したものである。宇野功芳氏もその推進者だったが、実際の演奏に接してネガティブなコメントが多く、その後1983年にもう1回カテドラルでのコンサートシリーズがあったが、その後実現していない。そもそも、ブルックナーは教会のオルガニストだったから、その交響曲も教会の残響を考えて作曲したのだろう、という話にもとづく。交響曲には、多くのゲネラルパウゼがあることがその根拠になっている。

朝比奈さんの聖フロリアンでの演奏会は、当のフロリアンでも初めてだったらしい。この演奏のあと、マルモアザールではなくて、教会のドームの方でいろいろなブルックナーのコンサートが行われた。没後100年は、ピエール・ブーレーズがウィーンフィルと8番を演奏したし、あとヨッフムもやっている。

このカテドラル公演は、当初全然チケットが売れなかった。当時、梶本に友人がいて、彼に頼んでチケットを入手したが、まったく売れないと言っていた。しかし、その後のいろいろな努力があったのだろう、各公演は満員だった。

そして実現した第4番。それは夢のような音響空間だった。最初のホルンがきこえてきたとき、鳥肌がたった。音があっちこっちから聞こえてくるのだ。第3楽章の角笛は、天から降ってくる感じだ。東京カテドラルというのは、席によって、まったく音響が異なるそうで、いい席とそうでない席とは満足度が違うようである。この演奏も、その前のジャンジャンのものも、オケがやりたい放題鳴らしているという感じがして、音楽のエネルギー感がすばらしいのだ。音楽的な完成度としては、やはり最後の2001年のものだろうが、このころの演奏も楽しく聴ける。

これを聴いているよ、そのときの記憶がよみがえる。まだ、朝比奈さんのブルックナーがそんなに神格化される前の話である。

このカテドラルのコンサートでは、宇野さんは、残響は要らないというコメントをしていた。響きすぎて、何をやっているのかわからない、ということだそうである。

しかし、私は、この残響を好む。音が重なって聴こえないという以上に、この陶酔感は他では味わえないものだ。ギュンター・ヴァントのリューベックの第8番、第9番の録音がある。あれも残響がすごく長い。ヴァント自身それが気に入らなかったらしく、あとでこの2曲は録音しなおしている。その再録音もすばらしいが、私がよく聴くのは、リューベックの方である。朝比奈さんのブルックナーも聖フロリアンははずせないのだ。

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東京カテドラルにおけるブルックナーシリーズ 1回目 1980年

ブルックナーの演奏には、残響があったらどれだけいいだろう。

という発想で企画された演奏会のシリーズです。

このシリーズは、1980年と1983年に行われました。

最初の企画は、異なるオケによるものでした。

第4番 日本フィル 5月12日

第9番 新日本フィル 6月4日

第5番 東京都交響楽団 9月3日

第7番 東京交響楽団 9月13日

第8番 大阪フィル 10月24日

この企画は、梶本音楽事務所によるもので、当時私の友人が梶本にいたので、チケットを入手したのですが、最初のころ、売れなくて大変だったそうです。

それでも、演奏会そのものは、満員でした。

私は通しで買っていましたが、残念ながら、最後の第8番は、仕事でかけつけたときは、あの神がかり的なオヴェイションの最中でした。

この演奏は、最初、LPでカテドラルシリーズのセットで発売されました。

しかし、CDでは、バラバラになっています。このシリーズの発想は、どうしてもその音響にあるので、まとめてセットにした方が、一貫性があります。

今このシリーズは、

第5番、第9番がヴィクターの全集に入っています。

第4番、第7番、第8番は、タワーレコードからセットで発売されています。

第5番、第9番が、XRCDで出ています。

これについても、個々の演奏については、ひとつずつ書く予定にしています。

最初、第4番を聴いたとき、あの長い残響の快適さは忘れません。

とくにロマンティックの第3楽章のあのホルンの響きが天上からふってくるのです。

このカテドラル教会の響きはものすごく長く、確かに全奏部分では、何がなんだかわからなくなります。しかし、このひびきにつつまれる体験は貴重でした。

ギュンター・ヴァントの録音でもリューベックの第8と第9があり、あれもものすごい残響で、本人が気に入らなくて再録音していますが、私は、あの旧録が好きです。

このシリーズ、今聴いても圧倒されます。非常に表現意欲はつよく、面白い演奏が多いです。各曲オケが全部別ですが、朝比奈トーンになっているのがまた興味深いところです。

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