ブルックナー 交響曲第7番 ハース版 朝比奈隆 大阪フィル 1976年 ジャンジャン

ジャンジャンによるレコーディング。

これは、ライブではなく、セッション録音。

LPでは、あまりステレオ感がなかったが、CDはオンマイクで横に広がる。もともとワンポイントとマルチの両方のマスターがあり、LPはワンポイント、CDはマルチを使っている。

LP時代、モノ的に聴こえ、とくにフロリアン盤があるなかで、あんまり聴く気がしなかったのだが、CDはマルチのマスターで、音がかないリッチになり、今聴くとけっこうおもしろい。

神戸文化ホールの響きのためか、比較的アラがめだたない。このシリーズのものでは、かなり上質の音である。

フロリアン盤と比べると、ずっとテンポもはやく、線も太い。しかし、テンポははやいものの、フロリアン盤とスタイルはよく似ている。この時点で、演奏スタイルが確立されている。

思いのほか、純度の高い音で収録されている。

第1楽章

なめらかにはじまる。演奏スタイルが後年のものとそう違いがない、非常にこなれた演奏。コーダも、猛烈に遅いテンポになっており、フロリアン盤と共通。

第2楽章

基本フロリアン盤に近い、もうすこしテンポがはやく、線が太い。朗々として歌がある。

第3楽章

朝比奈さんのスケルツォとしては、テンポが速い。しかし、重量感は失わない。

第4楽章

朗々と、また堂々と。1、2楽章にウェイトをおきがちだが、フィナーレとして非常に立派な演奏になっている。

・交響曲第7番ホ長調 WAB.107(ハース版)[67:44]
 第1楽章:20:50
 第2楽章:23:10
 第3楽章:09:34
 第4楽章:13:10
 録音時期:1976年4月14日
 録音場所:神戸文化ホール
 録音方式:ステレオ(セッション)

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ブルックナー 交響曲第6番 朝比奈隆 大阪フィル 1994年 キャニオン SACD

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朝比奈 ブルックナー 交響曲第6番

朝比奈さんのポニーキャニオンによる3度目のブルックナー全集から、第6番。これは1994年4月1-4日、大阪フィルハーモニー会館でのスタジオ録音。DSDマスタリングを施し、SACDとなり、すばらしく音質が改善された。2回目に出たHDCD盤を出してきて比較してきいてみたが、こちらの方がずっとナマに近く、音も自然である。全体の雰囲気がとても美しい。

私は、この6番のナマ演奏、朝比奈さんのタクトで聴くことはできなかった。なかなか演奏しないし残念であった。

この全集の中では、もっとも美しい演奏だと思う。6番のほかの演奏と違って、音が澄んでいるからか、線が比較的細めに感じ、いままできいていたブルックナーの6番とは、まったく別物の響きがする。

第1楽章から、非常に硬質な響きである。とてもダイナミック。

第2楽章は、ブルックナーが書いたもっとも美しい曲の1つだと思うが、朝比奈さんのアダージョの表現としては、これほど慈悲深い表現をしているのはないのではないか、と思う。安らかで、かつしみじみとした味わい。ほかの作品のアダージョのような思い入れたっぷりというのではなく、実に淡々とした枯れた味わいのアダージョで、こういう作品はブルックナーでは、この曲しかないと思う。NHKのあるドラマでこの曲が流れていて、非常に印象的だった。(稀代の性格俳優斉藤洋介主演で、車椅子にのった主人公。ヨッフム指揮のDGGのLPが回っているところが写っていた)

第3楽章も、低弦の響きがひきしまっていて、小気味がいい。テンポが中庸で、すばらしく安定感のある上に、それにのって生き生きとした音楽が続く。

第4楽章も、低弦が小気味よく始まるが、全奏になると、マッシブは迫力がすばらしい。そのまま全体をしめくくる。

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ブルックナー 交響曲第3番 改訂版 朝比奈隆 大阪フィル 1993年 キャニオンSACD

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朝比奈 ブルックナー 交響曲第3番

キャニオンでの朝比奈さんの3度目の全集をDSDマスタリングしてSACD化したもの。最初単発で、それから全集、それから廉価盤でHDCDになり、今回が4回目の発売。朝比奈さんの生誕100周年にあわせた再発で、音は格段によくなった。1993年10月3-6日、大阪フィルハーモニー会館(セッション録音)このシリーズで最高の演奏といわれている演奏。朝比奈さんは、3番の録音については、全部楽譜が違う。これは、最初ノヴァーク第3稿といわれていたが、のちに改訂版ということになった。

これは、ノヴァーク第3稿のパート譜をとりよせたら、改訂版の楽譜がとどいてしまったらしい。それで、第1楽章429から430小節のホルンの音が第2版の引用がある。

この3回目の全集が企画されたとき、とくにこの3番は朝比奈さん本人がしんどいということで躊躇していたが、1~3と6をレコーディングで行うことでOKしたらしい。

大阪フィルの2001年11月の定期演奏会で3番を取り上げる予定であったが、朝比奈さんが病気療養中で、かわりに外山雄三指揮でシューベルトのグレートだった。私は定期演奏会のチケットを持っていたので、この演奏会には行っている。なお、この11月には、初版を使うという話であった。このスコア、棺に入れて燃やしてしまったらしいが、棺に入れたのは、指揮者でもある長男千足氏だから、本人にきけばどの楽譜かわかるだろうに。

朝比奈さんのブルックナー3番の演奏で、今でも語り草になっているのは、1978年7月28日の東京厚生年金会館の大フィルの東京定期の演奏。ブルックナーをこよなく愛する友人はこれがベストだという。これの公式録音は残されていないが、CD-Rがあるようだ。見たことはないが。

このキャニオンの演奏は、公開演奏ではないので、ナマでは聴いていない。このキャニオンのものは、大半が大阪での録音で、実際にナマをきいているのは、4番と8番のみである。当時、コンサートを聴きに大阪に行くという知恵はなかった。

私にとっては、この3番は鬼門というか、ブルックナーの曲としては苦手にしていて、比較的聴く機会が少ない。楽譜がいろいろあるのに、あんまり熱心に違いを知ろうという気もおきない。嫌いというのではないのだが。最初に聴いたのはジャンジャンの録音になった大フィルの定期演奏会だった。周りはみな絶賛していたが、私はいまひとつ乗れなかった。

さて、この演奏だが・・・。
最初の音を聴くと、やはりライブではないので、緊張感がないまま突然はじまったような感じである。アンサンブルがあんまりそろっていない。といってばらばらという感じでもない。最初のうちは、音が比較的平板。ただ、音楽のつくりは比較的丁寧。そして、だんだんのってくる、という感じになる。第2楽章にしても、あんまり濃厚ではなく、比較的さっぱりしている。スケルツォ楽章がかなりテンポがゆっくりしているし、重量級の熱っぽい演奏になる。第4楽章は非常にむずかしい曲で、音の並びがスマートではないと思うのだが、この演奏はなかなか性格をきちりと描きわけている。ライブではないが、だんだん乗ってくるというスタイルの演奏。そして最後は、非常に力強く締めくくる。

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ブルックナー 交響曲第2番 朝比奈隆 大阪フィル 1994年 キャニオンSACD

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朝比奈 ブルックナー 交響曲第2番

キャニオンでの朝比奈さんの3度目の全集をDSDマスタリングしてSACD化したもの。最初単発で、それから全集、それから廉価盤でHDCDになり、今回が4回目の発売。朝比奈さんの生誕100周年にあわせた再発で、音は格段によくなった。1994年1月24-27日、大阪フィルハーモニー会館 (セッション録音)

楽譜は、ハース版である。

朝比奈さんは、初期のなかでは、この第2番が一番好みのようで、よくとりあげている。NHK交響楽団ともやっているし、在京のオケの演奏もけっこうある。最初のジャンジャンの録音でも、もっともレベルの高い演奏だった。そういう意味でも、非常に自信あふれた安定感のある演奏が多い。

第1楽章、最初の音からして、絶好調。のりにのっている。弦の表情にかなりねばりがあるのが特徴。一部そろっていないところもあるが、まあいいやというようにぐいぐい進む。なかなか聴き応えがある。

第2楽章、これも最初からのっている。とくにチェロの表情がすばらしい。

第3楽章、スケルツォ楽章だが、ものすごく太い音で、ゆったりと進む。ど迫力のある表現。

第4楽章、ひとつひとつ音をきちんと鳴らし、安定力のある非常に豊かな音楽である。ピッチカートが強めできちんとリズムを刻むし、その土台で厚みのある音楽がなる。また、ゆったりした部分はデリカシーも豊かである。

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ブルックナー 交響曲第1番 朝比奈隆 大阪フィル 1994年 キャニオンSACD

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朝比奈 ブルックナー 交響曲第1番 キャニオン

キャニオンでの朝比奈さんの3度目の全集をDSDマスタリングしてSACD化したもの。最初単発で、それから全集、それから廉価盤でHDCDになり、今回が4回目の発売。朝比奈さんの生誕100周年にあわせた再発で、音は格段によくなった。1994年5月15-17日、大阪フィルハーモニー会館(セッション録音)

リンツ稿にもとづくハース版である。朝比奈さんは、この第1番の演奏はすくないが、ウィーン稿では演奏していないはずである。

録音は、HDCDでもかなりいいのだが、SACDになると雰囲気がより自然になる。音がやわらかく、なんといっても空気感がすばらしい。

私は、この第1番を朝比奈さんのナマ演奏ではついぞ聴くことができなかった。あとは6番である。それほど演奏の機会が少なかったのである。0番、2番は幸い聴いているのだが。

この1番、スタジオ録音で、最初のちょっとはライブでない気安さが感じられるが、すぐに乗ってきて、実にすばらしい演奏を繰り広げている。第1楽章の最初からリズムが安定していて、のびのびとした実にいい響きを出している。

第2楽章も感傷的にならずさらりとやっているようで、実に味わい深い。

第3楽章は朝比奈さんらしく、ちょっと野暮ったいど迫力のある演奏。重たい表現だが、テンポがおそいわりに違和感はまったくない。これが朝比奈スタイルのスケルツォ演奏法。

第4楽章は、最初から鳴りきっていて迫力のある演奏。見事なフィナーレを形作る。

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ハイドン 交響曲第82番、第99番 朝比奈隆 ベルリン放送交響楽団 1971/4年

朝比奈隆 ハイドン

朝比奈さんの、発掘CDのひとつです。

ハイドンの交響曲。

まず聴いてみてください。

その美しさにびっくりします。

録音がいいです。

歌があります。

こんな演奏、1970年代のはじめにやっていたんです。

オケがうまいですねえ。歌こころが違います。

もううっとりです。

こんなすごい演奏あったんですねえ。 

ドイツ語のインタヴューがついているんですが、朝比奈さんのドイツ語はじめてききました。むちゃくちゃうまいですねえ。

HMV HPから

朝比奈隆ヨーロッパ・ライヴ第2弾!
ディスク初レパートリーのハイドン名演集!

「我々はハイドンの時代にハイドンがどういう風に演奏されていたかを知る由もない。それにもし我々がその時代にタイムスリップして、その時代の演奏を聴けたとしてもベートーヴェン、ブラームス、ブルックナー、マーラーを経験している我々が当時の聴衆と同じ感想を持つとは思えない。その意味で朝比奈のハイドンはロマン性に傾斜したものだが、テクスチャはクリア、リズムは活発で情熱的でもある。そして温かみと雅趣がそこにはある。試みに第99番のトリオを聴いていただきたい。音楽の微笑のみならず指揮者の微笑すら発見できるだろう」~ヘンリー・フォーゲル(元シカゴ響総裁)のライナーノートより

朝比奈ヨーロッパ・ライヴ第2弾。朝比奈は晩年ハイドンを取上げることはほとんどありませんでしたが、オーケストラの基本レパートリーであるハイドンにも造詣深く全交響曲演奏を目論んだこともあるほどです。音盤初登場となる名曲2題はベルリン放送響(現ベルリン・ドイツ響)との共演という点がファンを狂喜させましょう。演奏スタイルは現今主流であるピリオド・アプローチの対極にありアーベントロート、クナッパーツブッシュ、フルトヴェングラーを彷彿とさせる豊穣で大らかな名演です。定期演奏会ではなく放送用のセッション録音であり、如何に朝比奈が放送局、オケから信頼されていたかを物語ります。堪能なドイツ語で応対するインタビュー付。英語、日本語、ドイツ語によるライナーノート付。(TOBU)

【収録情報】
・ハイドン:交響曲第92番『オックスフォード』
・ハイドン:交響曲第99番
・1975年渡独時のインタビュー
 ベルリン・ドイツ交響楽団(旧西ベルリン放送響)
 朝比奈隆(指揮)
 録音時期:1971年2月8-11日(第92番)、1974年2月18,19日(第99番)
 録音方式:ステレオ(放送用セッション)

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