2020年12月23日に文庫になりました。
朝比奈さんがベートーヴェンの演奏について語っている本ですが、めちゃくちゃ面白いです。
これほど興奮して読んだ本はないんじゃないか、と思います。
ビクター全集の特典としてつけられたCDです。
いまは、復刻されて単独に入手可能です。
朝比奈さんと宇野さんの対談です。
ステレオできれいな音です。
ベートーヴェンは使命感、ブルックナーの場合は使命感かもしらんが、あまりにも系統的に聴かれていない、特別な存在、あのタイプの作曲家(あの作風)は以後あらわれなかった。完璧なロマン、様式を模索しているが、全体としてひとつの作曲家がひとつの特別の世界がある。意外とヨーロッパの演奏家もいいとこどりしている。全集でもあちこちにやったものを並べただけ。良かれ悪しかれ、やったものを全部記録しておきたいというビクターの申し出があったのでお受けした。
ブルックナーの音楽の特色
楽譜の書き方は、ベートーヴェン以来そうかわっていない。ブルックナーの場合は、曲にもよるが、1、2、3、6は、これやったら、どういう音になるか、譜面から出てこないので、やってみるしかない。こうやってもうまくいかないというか、失敗の積み重ねが必要。0番は、手をいれるというか、アーティクレーションが何も書いていないので、かなりいろいろやってみた。適切かどうかわからないが。それ以外はいじらないでやったが、いじらないでやるのが難しい。改訂版がでたのは、いじらざるを得ないのだろう。
ブルックナーの演奏としてきをつけること
マーラーやワーグナーはちゃんとした譜面だが、そのとおりひけばいいが、ブルックナーはどういう奏法をしたらいいか考えなければならない。スラーはずっとつづいているし、同じようなのがつづいているし、主題は長いし。管楽器はオルガンストップのような書き方、しかし息をするところがない。
最初やったのが1954年で、最初は、そういう模索をしていた。何十年もやっていたら、見当もついた。新しいオケとやるときの説得力もつけたし、自分用の楽譜もできた。昔貸し譜しか使えないときがあった。アメリカはワシントン条約を批准していないので、海賊版が多い。資料の点で、貸し譜だった。しかたなくて、写譜をした。みんなつかっているので、いろいろ書いてある。そのうち、パートでもいろいろある。今は、スコアは新しいものをアメリカ版で買う。今は楽になった。今は、全部指揮者の責任になる。写譜なら、前の人のあとがある。そんなことをしているうちに10曲はいってきた。
なんて、続いてます。
第0番
どうやっていいかわからないところが多い。
発想が非常に自由なところと、一般的な作風の両方あるが、特徴はあんまりでていない。
第1番
第1楽章の最初は、すばらしい。あれを思いついたから書いたのだろう。最後は古典派みたいで困っちゃう。はじめて自分の作風。
20台のころ、演奏を聴いたことがある。宝塚でやった。
メッテルに怒られた。生涯はじめてブルっクナー。
あとで書き直したのは、違う作品になっている。
第2番
はじめのところ、なかなかいい。
ラインランドでオパーのオケでやった。最初のチェロ、意外に難しい。弾いているほうがむずかしい。ホルンが大変上手だった。そのときの鴛鴦はとてもよかった。ゲルゼンキルヘン。
ホルンで、自然音であがるのは、大変難しい。
あんまりヨーロッパではやらない。
オーケストレーションに慣れていないということですか。
ほしい動きをそのまま書く。それが必ずしもやりやすいかどうかわからない。
第3番
これも2番と同じような難しさがある。
この2つの曲は演奏家の責任である。いい演奏をすれば、作品のいい部分が伝わる。
コンパクトで作り上げた。
あんまりやりたくない。
すらすら出来ているが、
第3稿やったことがあるが、クリングスハイムが来て、いろいろしかられた。本屋にあったからとはいえない。実は自分の意見がなかった。普通の指揮者は、みなこれをやる。それで全部やろうと思って、全部やってみた。
ワーグナーの引用については
ワーグナーは偉大だと思うが、オーケストラに非常に特徴がある。中音域の楽器をよく使う。それ以外では、音楽そのものは意味があるが、オーケストレーションについては、あとに影響を残していない。ただ、大規模なこと、長大な音楽でやる、というのは影響があるかもしれない。演劇的には才能あり。オケとしては、マーラーとかリデャルト・シュトラウスは旨い。ワーグナーは影響を与えていないのは、むしろ、マーラーの方がブルックナーの影響があるように、ブルックナーの影響力がある。ワーグナーシンフォーニーというが、だんだん色があせてくる。
第4番
きのう、新日本フィルでやったが、技術的に完璧だった。
ロマンティっクという名前は?コントラストがはけしい、というような意味。
第5番
第4とはずいぶん違う。出来がよくなっている。
4と5はバロック奏法を意識しないといけない。とくに弦。オルガンからきている。
5はバロックの建築。
5が一番大シンフォニー。6から出直しをしたよう
第6番
第1は立派。フィナーレが魅力はない。演奏が悪いのかもしれない。通しでどうやっていいかわからない。東京交響楽団の6番はいいとこいっている、と思う。
リンツでブルックナーをやった。ウィーンのオケがやったことがない。惨憺たる出来だった。東京の方がいい、日本はわけがわからなくても一生懸命やるので、なんとかなる。
6番は、ちょっと新しい書き方を模索。第1の編拍子はおもしろい。
第7番
一番やりやすく、ポピュラー。
4楽章が短いが、展開部が倍くらいほしいね。すぐすんじゃう。根気がなくなったか。
第8番
本当に立派な作品。
目白で、8番やった。若い客ばっかりだった。大変な感動だったらしくて、若い客が泣いている。悲しいわけでないのに。泣いて泣いて、今度は、帰らない。30分近く舞台にいました。教会の十字架がなんともいえない。
このひと、精神的なものが多い。
弦のボーイングは、自分が考えたボーイングでないとうまくいかない。自分がヴァイオリンをやっていたのでできる。貸し譜はダメ。
フルトヴェングラーみたいな人がなぜ12小節ぬかすんでしょうね。
クレンペラーはフィナーレの展開部がない。ほかの人は真似しないように、ともいっている。
第9番
未完成でよかった。
曲としてすばらしい。
なんとも余情があっていい。
こころこめてやれば、あれにフィナーレはいらない。
2楽章がデモーニッシュ。
原典版がいい。
フルトヴェングラーに会わなかったら、レーヴェのをやっていた。あれは助かった。まったく違うものになってしまう。
決してやさしくないが。
最後にひとこと
ブルックナーに限らないで、ベートーヴェンでも同じだが、大作曲家がいて、誰が偉いということはないが、精神的に対象になるのは、ベートーヴェンよブルックナーだろう。
この二人に圧倒的に、日本の聴衆が多い。
こういう音楽をもとめている。日本の聴衆はすばらしい。感動して興奮するということが、あまりない。日本は、中学生、高校生が来るんだ。すばらしい。
送料無料!!【CD】朝比奈隆メモリアル・ボックス/ブルックナー交響曲全集/朝比奈隆 アサヒナ タ… |