ブルックナー ミサ曲第3番 朝比奈隆 大阪フィル 1983年 カテドラル

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ブルックナーのミサ曲第3番ヘ短調の演奏である。

東京カテドラルの2回目のシリーズでのライブ録音

タワーレコードから、シングルレイヤーのSACDによるセットが発売されている。ものすごくいい音で楽しめます。

朝比奈隆&大阪フィル、他/ブルックナー:ミサ曲第3番

朝比奈隆(1908年7月9日生~2001年12月29日没)生誕100周年目を迎える今年、21年間再発されなかった貴重な音源を最新のマスタリングを施し再発売!!(ビクターエンタテインメント)

・ブルックナー:ミサ曲第3番ヘ短調WAB.28[原典版]
 中沢桂(ソプラノ)
 林誠(テノール)
 井原直子(アルト)
 勝部太(バス)

 大阪フィルハーモニー交響楽団
 T.C.F.合唱団(合唱指揮 辻正行)
 朝比奈隆(指揮)
 録音:1983年9月16日、東京カテドラル教会マリア大聖堂ライヴ(デジタル)
 [最新リマスタリング盤]

最初LPで出て、ずっと入手できなかった貴重なソースで、朝比奈さんの生誕100周年記念でCD化された。音質もとてもよい。

1980年に、大阪で一度この曲を取り上げているが、この演奏は、1983年に朝比奈さんの音楽生活50周年を記念して行われた東京での3日間かけたオール・ブルックナープログラムのひとつである。

朝比奈さんは、この会場になった東京カテドラルをいたくお気に入りのようだったが、これ以後、ここでは行われなかった。

この演奏会、私は、実際に聴いている。3夜にわたる演奏、全部聴くことができた。私がカテドラルで聴いていないのは、第1回の8番だけである。

最初に、ブルックナーの交響曲第3番のアダージョ第2番が演奏された。そしてこのミサ曲。

最晩年の演奏を聴いているなかで、この時期の朝比奈さんの演奏を聴くのは、実に好ましく、音楽が非常に元気である。なにより、音すべてに勢いがある。そのもっとも好ましい演奏のひとつではないだろうか。そして、音色が暖かい。

大阪での1980年の演奏と一番違うのは、合唱。TCF合唱団で、指揮者の辻さん自身もステージにたっていた。大フィル合唱団よりもずっと清涼は響きであるが、味わいという点では、こちらの方が蛋白。しかし、会場で聴いたときの印象と比べると、はるかに、熱い演奏である。実にすばらしい。

それと、やはり会場の残響が非常に長いのが特徴。だから、大フィルの音もすごく雄大に聴こえる。

最初のキリエから、全体のトーンが非常に前向きで人生肯定的で、すばらしく生命力があるのに、驚かされる。

グローリアも、非常に太い流れのまま、すばらしい音響空間となっている。ただ、残響が長いために、音がちょっと混濁気味。

クレド。力つよく、確信にみちた音楽である。コーラスの表現も深い。実に堂々とした非常に熱い音楽である。

サンクトゥス。線が太くて、比較的ぶっきらぼうで、あまり洗練されていなくて、非常に重量感のあるサンクトゥス。朝比奈さんらしいといえば、そういえる。

ベネディクトゥス。最初にチェロが非常に美しい旋律を奏でる。この美しい旋律が全体のトーンを決めている。非常に優雅な音楽だが、表現は、いつものように淡々としつつも、非常に味わいがある。

アニュス・デイ。非常に丁寧な音楽作りをしている。最後にふさわしく、非常に雄大な音楽に仕上がっているが、あたたかさと静けさももっていて、なんとも味わい深い。最後のコーラスで静かに終わるところは、非常に感動的である。

このミサ曲の演奏のなかでも、その生命力、幸福感という点から屈指の名演奏であるといえると思う。

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