ジャンジャンのブルックナーの最初の録音のひとつ。
神戸文化ホールでのレコーディング。
1976年4月22日。
第7番の少しあとになる。
当初LPで出たときは、あんまりステレオ感を感じない録音だったが、これは、マルチマイクのマスターによるもので、かなりオンマイクの録音になった。
非常にすばらしいアナログ録音である。
10分35秒あたりで、急に雰囲気がかわるので、切り貼りしているということだろう。
23分50秒に音ゆれがある。
朝比奈さんの、ブルックナーの9番の生演奏は、数回聴いているが、完成度の点でいまひとつということが多く、レコーディングでもなかなかその感じが否めない。
本人は大好きな曲であったようだが、演奏は相当難しいようだ。
第1楽章
ゆったりとすすむ。比較的スムーズに流れるが、比較的表情が一定というか、後年のものと比べると単調な感じもある。
今、あらためて聴くと、オケの力量もふくめ、意外と出来がいいように思う。かなり自由なところもあって、けっこうおもしろい。
第2楽章
比較的淡々としているというか、後年のような、かなり重量感のあるものとは印象がちがう。
テンポの自由度はかなりある。
トリオ部分も、比較的あっさり目である。
第3楽章
丁寧にやっているが、深みとか壮絶さという点では、晩年のものとくらべてはいけないかもしれないが、少々ものたりない。後年とくらべると、おとなしいとの印象ではある。対旋律が単調なので、全体的な力感も弱い。しかし、この時点での演奏としては、相当すごいものだったと思う。最後のヴァイオリンの旋律など、かなり歌っており、中期のものと比べると表現意欲は強いと思う。
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この第3楽章のリハーサルが付属している。
朝比奈さんの練習は、きわめて職人的で、ひとつひとつ技術的なものを克服していくという方法。
最初の音が合わない、ということをしきりに言う。それと、遅れないように、と。
遠慮しないで、歌うように、とも。
この遅れるのは、かなりの責任は朝比奈さんの棒によるものだろうけど。
金管で、どうしてもピッチが合わないところがある。
ちなみに朝比奈さんは、この第3楽章の最初は4つ振りにしている。
期待されるような、教養とか、精神論とかは、まったくない。
声が若々しいですねえ。
このリハーサルでの音、けっこう音になっていて、本番よりいいかもしれない、というところがけっこうありますね。
・交響曲第9番ニ短調 WAB.109(ハース版)[64:55]
第1楽章:26:50
第2楽章:11:27
第3楽章:26:38
録音時期:1976年4月22日
録音場所:神戸文化ホール
録音方式:ステレオ(セッション)
新発見のオリジナル・マルチによるデジタルリミックス盤