朝比奈さんの最後のブルックナーシリーズ。ハイブリッドによる再発売。生誕100周年ということで、あらためて発売されたもの。SACDであるが、HQでステレオだけ。やはりマルチがほしいと思っていたのだが、この音を聴くと納得してしまう。すばらしく美しい響きである。
朝比奈隆の奇跡のシリーズではなくて、フェスティヴァルホールにおける定期演奏会。これも実際に聴いている。録音は、シンフォニーホールのと比べると、最初はデッドに聴こえるが、すぐに慣れる。
朝比奈さんは、7番を何度も演奏しているし、録音も多い。なんといっても聖フロリアン教会での演奏がすばらしいが、この演奏最晩年のものだが、テンポがはやい。ひびきとしては、ほかの録音とくらべると聖フロリアンのものに一番近いかもしれない。オケの実力は、やはりこの30年で相当向上している。何よりも音の純度が非常に高く、すっきりした表現だが、じっくりとした味わいがあり、実に感動的な演奏。こんな演奏だったかなあ、と今ちょっと意外な感じがしている。
朝比奈さんが、最後に到達した、空前絶後の至福の世界である。この年の終わりに亡くなってしまうのだが、このころは、まだ元気だったような気がする。