キャニオンでの朝比奈さんの3度目の全集をDSDマスタリングしてSACD化したもの。最初単発で、それから全集、それから廉価盤でHDCDになり、今回が4回目の発売。朝比奈さんの生誕100周年にあわせた再発で、音は格段によくなった。1994年5月15-17日、大阪フィルハーモニー会館(セッション録音)
リンツ稿にもとづくハース版である。朝比奈さんは、この第1番の演奏はすくないが、ウィーン稿では演奏していないはずである。
録音は、HDCDでもかなりいいのだが、SACDになると雰囲気がより自然になる。音がやわらかく、なんといっても空気感がすばらしい。
私は、この第1番を朝比奈さんのナマ演奏ではついぞ聴くことができなかった。あとは6番である。それほど演奏の機会が少なかったのである。0番、2番は幸い聴いているのだが。
この1番、スタジオ録音で、最初のちょっとはライブでない気安さが感じられるが、すぐに乗ってきて、実にすばらしい演奏を繰り広げている。第1楽章の最初からリズムが安定していて、のびのびとした実にいい響きを出している。
第2楽章も感傷的にならずさらりとやっているようで、実に味わい深い。
第3楽章は朝比奈さんらしく、ちょっと野暮ったいど迫力のある演奏。重たい表現だが、テンポがおそいわりに違和感はまったくない。これが朝比奈スタイルのスケルツォ演奏法。
第4楽章は、最初から鳴りきっていて迫力のある演奏。見事なフィナーレを形作る。