キャニオンによるブルックナーの交響曲全集のひとつ。最初バラで、それから全部ひとまとめに、それからHDCDで廉価盤、そして、SACDで出た。
1994年6月27日大阪フェスティヴァルホールでの実況録音。
朝比奈さんは、この第5番が一番演奏が難しいといっていた。最初、ジャンジャンの全集を出すときに、最後の最後までとっておいたのである。しかし、朝比奈さんの表現の相性としては、もっともあっていう曲であると思う。
最初のジャンジャンのときから、圧倒的な演奏をしている。
この演奏は、1994年の大阪のもので、私は聴きにいっていないのだが、このあたりの東京での演奏はあほとんど聴いている。どれもすばらしい。
さて、この演奏、大阪フィルとしても非常に精度も高く充実した演奏である。
第1楽章、きわめてきちりとした演奏ではじまり、かなりかっちりした表現であるが、だんだん乗ってくる。かなり固めの音で直線的な音づくりである。
第2楽章、ごくゆっくりと丁寧に低弦のピッチカートに木管がのせてくる。ここらへんは比較的おとなしいが、弦のアルコになってとたんに表情が豊かになる。それからは、非常に厚みのある雄弁な音楽にかわる。中間部は、管の表情がなかなか楽しい。
第4楽章、おごそこにピッチカートではじまる。ここから、各楽章の回想をする。ベートーヴェンの第九みたいに。それがひととおりおわって感動的なコラールがある。ここのコラールのときに、残響が長いところだと、本当に神秘的に響き、そのあとに出てくる弦楽が絶妙にきこえるが、ここはデッドなので、比較的あっさりと出てくる。この雰囲気は、やはり東京カテドラルのあの響きがなつかしい。このコラールがあってから、大フーガ。この大きなうねりがつづいて圧倒的な迫力でクライマックスを迎える。最後は、倍管にし、圧倒的な大音量でおわる。