ブルックナー 交響曲第0番 朝比奈隆
東京都交響楽団 1982年5月12日 東京文化会館 ライブ FONTEC
朝比奈さんのブルックナーの第0番は、3種の録音がありますが、その最後のもの。
さすがに、これが一番完成度が高いです。
戦後まもなくブルックナー演奏を開始した巨匠朝比奈隆ですが、意外にも“日本初演”を指揮したのは第0番だけでした。朝比奈によるブルックナーの音源は数多く残されましたが、第0番となると1978年盤(ビクターの全集)があるのみでした。今回、初出となる東京都交響楽団との演奏は、ノヴァークの新原典版が出版されて間もない頃に行われたものです。朝比奈は、この時点で既に新版を十分に咀嚼してオーケストラを指揮しており、ブルックナー自身が「全然通用しない単なる試作」と呼んだこの作品が、実はまぎれもない傑作であることを証明しています。都響は、このライヴの前月にはジャン・フルネを指揮台に招いていますが、本演奏においてもしなやかさと重厚な響きを両立させた素晴らしいブルックナーを聴かせており、正しく快演。