ブルックナー 交響曲第7番 朝比奈隆 大阪フィル 1999 サントリーライブ

ブルックナー 交響曲第7番 ハース版

朝比奈隆指揮 大阪フィル 1999.11.5 サントリーホール ライヴ

DVD映像作品 EXTON OVBC-00001

朝比奈  ブルックナー 7 DVD

映像作品である。朝比奈さんの映像は、意外に出ていない。最後の大フィルのシリーズは、朝日放送がとっていて、発売が予告されていたが、出たのは最後の9番だけである。

この演奏は、1999年11月に東京で行われているが、サントリーの佐治敬三氏の告別式の当日だった。大フィルは、毎年7月に東京定期演奏会を行っていたが、これは、東京で多くの演奏を、と特別に企画されたものである。

ハイビジョン映像で、ゆったりとしたアングルでなかなか見ごたえのある映像である。朝比奈さんもまだ元気なころである。
同時期に、大阪で朝比奈隆の軌跡シリーズで、この曲もあとあげられている。

演奏は、それまでとはかなり違い、クレンペラーを意識して、テンポがはやくすっきりした演奏になっている。すっきりという点では、大阪フェスの最後の定期塩演奏会の方が顕著であるが。

テンポがはやく、ぐいぐいすすんでいくのが特徴で、尻上がりによくなってくる。ややアインザッツに乱れが見られ、アンサンブルも少々雑な面もあるが、テンポがはやいのに、個々の表情が濃いのも特徴。スタイルは筋肉質で、数多いこの演奏記録のなかでも特徴的でる。

古い大フィルファンにとっては、ティンパニの八田さん、ホルンの近藤さんの顔がみえるので、非常になつかしい思いがする。八田さんは久しぶりの登場だったようだ。

 

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ブルックナー ミサ曲第3番

ブルックナー ミサ曲第3番

1.大阪フィル 1980 大阪フェスティヴァルホールライヴ 大阪フィルプライヴェート盤

2.大阪フィル 1983 東京カテドラル教会ライヴ ビクター

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ブルックナー 交響曲第3番 朝比奈隆 新日本フィル 1996 オーチャード

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ブルックナー 交響曲第3番 朝比奈 新日本フィル

ブルックナー 交響曲第3番
朝比奈隆指揮 新日本フィル(第3稿 改訂版)
1996年オーチャードホール
フォンテック FOCD-9630

DVDで同時期の演奏がでていますが、あれは東京文化会館、こちらはオーチャードが主体のようです。初出録音。

東京文化会館ライブ

朝比奈さんのブルックナーの3番は、この演奏の前には、大フィルで1993年のものがありますが、この1996年のものが最後の録音になります。2001年に定期演奏会でとりあげる予定でしたが、10月24日の名古屋が最後の演奏会になりました。このブルックナー3番が予定されていた演奏会は、代わりに外山雄三さんが指揮をしました。プログラムも別の曲で。

このCDを聴く前に、アバドの極上の響きを聴いていたので、さすがに、1996年の新日本フィルの音は野暮ったく聴こえますが、それもすぐに慣れます。朝比奈さんの音楽を聴く時は、やはり特別な感覚があります。30年以上ライブをきき続け、そして、個人的にもお世話になっています。CDもまずほとんど全部もっています。そういう私としての朝比奈さんの音楽の接し方の歴史をふりかえざるをえません。まあ、身内の音楽という感じ。

さて、ブルックナーの交響曲第3番は、朝比奈さんとしては、得意なはずのブルックナーのなかではもっとも苦手な音楽だったようです。で、ちょっとほかの曲とくらべると流れが悪い印象もあります。

この第3番は、93年の大フィルと比べると、かなり印象が異なります。
だいたい新日本フィルと演奏するときの共通点として、弦のボーイングが非常にきちりとしていて、ちょっと流れがわるいくらい。ただ、ものすごく丁寧に弾いていますので、なかなかエネルギー感がある。93年の演奏の方が、もうすこし行書的というか、こなれています。これは、大フィルだから慣れているから、ということでしょう。朝比奈さんの練習は、楽譜を丁寧に弾くことを求めているので、最初は、どうしてもこういうゴツゴツした感じになります。かつ、朝比奈さんが、この曲に流れの悪さを感じていたら、そういう面が強調されます。大フィルのは、ここまで丁寧にはきこえない。とにかく、ものすごくいろんな表情がついてる。

たしか、この新日本フィルの演奏のリハーサルでは、大フィルのときのボーイングがいい加減だったとの説明もあり、その後、相当研究した跡がみられます。ま、とにかく、大フィルのがたしかにいい加減に聴こえるほど丁寧。

結果として、かなり音圧の強い、ゴツゴツとした音楽になっており、だんだんあとになるにつれて、いくぶん流れもよくなり、迫力満点です。

1993年の大フィルのスタジオ録音の方が流れがよく、洗練された音楽になっています。いや洗練というより、こなれた、というか、行書という感じ。新日本フィルのは、楷書ではないなあ。もうすこし、ずぶとくて、ごつごつした面を強調したような字体。だから、ずいぶん印象が違うので、両方つづけて聴くとなかなか面白いです。

録音はいくぶん固めです。大フィルのキャニオン盤の方が優秀録音。

ブル3 新日本フィル

【曲目】
ブルックナー: 交響曲 第3番 ニ短調 [第3稿改訂版]

【演奏】
朝比奈隆(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団

【録音】
1996年12月12日 東京文化会館 12月16日 オーチャードホール(ライヴ)

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ブルックナー 交響曲第7番 朝比奈隆 大阪フィル 1975 フローニンゲン

朝比奈さんの1975年のヨーロッパツアー、あの聖フロリアンの演奏で有名なツアーですが、そのときのツアーでオランダ、フローニンゲンで行われたライブ録音が発売になりました。

朝比奈 フローニンゲン ブルックナー 7

1975年10月26日です。

日本ブルックナー協会が解散するということで、会員には、このCDが配られました。

そのCDが届いたので、さっそく聴いてみました。

CDの番号は、ALTUS ALT219です。

4543638002191
朝比奈 フローニンゲン ブルックナー 交響曲第7番 CD

朝比奈 フローニンゲン ブルックナー 交響曲第7番 SACD

印象としては、きわめて聖フロリアン盤に近いです。ジャンジャン盤のあのスピード感のある演奏とはちがって、非常にゆったりとしています。しかし、面白いですよ。ソリストの音色が、フロリアン盤といっしょですから。

こちらの方が録音が明快です。この録音を聴きますと、聖フロリアンのオリジナル録音が聴いてみたくなりますね。

テンポは、こちらの方が残響が少ない分、といってもけっこうあるのですが、若干速めですが、それでもかなりゆっくりではあります。

聖フロリアンの演奏では、ホールが狭かったので、全員がステージには乗っていないのですが、こちらは全員乗ったようです。

しかし、ここまでのスタイルの一貫性があると、聖フロリアンの演奏は、偶然の産物ではないことがよくわかりますね。

第1楽章、最初のイメージからして、聖フロリアンと似ているものの、もっとくっきりした印象があります。それでも、かなりホールの残響はあって、なめらかな音です。この欧州の演奏旅行のために、大フィルはものすごい特訓をして、この純度の高い音を手にいれたのです。第1楽章コーダをこれだけ壮大に演奏する人は、朝比奈さんしかいませんが、ここでも同様です。

第2楽章、こちらもフロリアンよりもくっきりしています。それと、中間部で、けっこうテンポの動きがあり、よりダイナミックな表現になっています。非常に足取りがしっかりしていて、ものすごく律儀でまじめな感じもありますね。ちょっと間延びするように感じるところもあります。

第3楽章、朝比奈調スケルツォですね。けっこうテンポ速いですが、重量級。フロリアン盤は残響が長すぎてなにがなんだかわからないところがありますが、こちらは、細部がきれいに聴こえます。トリオはより生真面目に聴こえます。

第4楽章、快調な滑りだし。最初は、洒落っ気がある。それにつづくシーンは、なかなか丁寧な歌がきこえる。表現としては、後年とくらべるとテンポがよく動く。この7番のフィナーレは、全体からすると規模が小さいのだが、朝比奈さんは、この時期から、ここをちゃんとフィナーレとして、非常に荘厳な表現にしています。

で、結論として、聖フロリアンとくらべてどうかというと、そりゃ、聖フロリアンが圧倒的にすばらしいと思います。これはフェアではないです。フロリアン教会には、なんたってブルックナー本人が眠っているんです。そして、あの荘厳な雰囲気、何者にもかえることができません。あの演奏は、まさに一期一会の奇跡がつまっています。すべての音が神がかって聴こえます。一刻もはやく聖フロリアンの正規録音が聴きたいですね。大フィルにあるそうです。

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以下、発売元の解説

新発見! 朝比奈 大フィル 伝説の75年ヨーロッパ公演最終日!
あの名盤ザンクト・フローリアンと双壁の名演
初発売となる本録音はエンジニア平澤佳男が同行録音したもので、大変秀れた音質で残されておりました。朝比奈らしい不動のインテンポの堂々たる大演奏! そのうえ特別なヨーロッパでの公演のためかある種ただならぬ緊張感漂う見事な出来栄え。1楽章コーダなどでのレンジの広さも特筆でアルプスの山々のごとき雄大さです。

自ら育てた大阪フィルとヨーロッパ公演を行うことを熱望し、1975(昭和50)年10月、ついにその夢は実現する。約1カ月間、20回にわたる公演の中でも、ブルックナーの〈7番〉はもっとも重要な作品であり、26日にオランダ・グロニンゲン(フローニンヘン)で収録されたこのライヴは新発見された音源だが、その完成度はきわめて高く、あの名高いザンクト・フローリアンのライヴ(12日)と双璧を成すものだ。──音楽ジャーナリスト岩野裕一

■朝比奈/大フィルの1975年ヨーロッパ公演音源 ~オランダ・フローニンゲン公演発売にあたって
既に同曲異演盤が多数ある朝比奈隆のブルックナー:交響曲第7番において、フローニンゲン公演をリリースする意味は二つある。一つは、この公演が大阪フィル1975年ヨーロッパ公演における朝比奈指揮の最終公演であった。ツアーはこの後秋山和慶の西ドイツ公演にて、無事終了した。朝比奈の代表的名盤と言われる、ザンクト・フローリアンの名演奏から丁度二週間が経過。当初、長距離移動や不慣れなヨーロッパ滞在で疲れも見られた楽団員も、すっかり欧州の空気に馴染み、より完成度の高い演奏となった。もう一つは、この演奏が当時の大阪フィルのフルメンバーによる、ブルックナー演奏であるということである。ザンクト・フローリアンでは会場の都合で、木管の倍管を止めたが、朝比奈はこの曲では常に木管の倍管を行っており、本公演の演奏はより朝比奈の目指したブルックナーの音響と言えるだろう。1975年ヨーロッパ公演は、現地放送局が収録したモントルー公演、ベルリンSFB公演を除き、全て同行した平澤佳男により収録された。マスターテープに添付されたデータシートによると、録音機材はマイクがNeumann SM-69、U-87、レコーダーはREVOX A700で、3M社製テープが使用された。ライヴ録音としては最高水準のものであり、当然クオリティの高い録音が実現した。本CDの制作に当たっては、この録音のクオリティをそのままCD 化するべくマスタリングを行った。再生にはStuder A-80を使用。Summit Audio真空管ラインアンプを経由し、DB Technologies AD122-96にてデジタル化した。既に幾つかのヨーロッパ公演の音源は発表してきたが、残念ながら音源の多くが所在不明となっており、その中には当時ラジオ放送され名演との誉れ高いハイデルベルクのチャイコフスキーも含まれる。しかし、存在が確認されたものも幾つか有り、ザンクト・フローリアンはオリジナルテープが残っている。また、協奏曲も幾つかあり、これらも何れ発表の機会を伺いたい。なお、ザンクト・フローリアンはORFリンツにより録音が行われており、このテープの所在についても、調査したいと考えている。(下田智彦 文中敬称略)
キングインターナショナル
発売・販売元 提供資料 (2011/12/09)

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ブルックナー ミサ曲第3番 朝比奈隆 大阪フィル 1980年 (プライベート盤)

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この演奏は、1980年の大阪フェスティヴァルホールにおける定期演奏会です。

プライヴェート盤が作られました。
大フィル合唱団が出演する演奏会は、ライブ盤を作成し、出演料がわりに配布していたのですが、この時は、日本ブルックナー協会もからんでいたと思います。

私は、この時点で、すでに団員ではなく、演奏には参加していませんが、東京からかけつけて、聴きにいきました。

大阪フィル合唱団が1曲の練習に半年というのが通例だったのに、朝比奈の御大がわざわざ1年かけて練習した、熱意の産物です。

この演奏を聴いて、私は、涙がと止まりませんでした。

おわってからの打ち上げで、バスがベネディクトゥスの旋律はわれわれしかないんだ、と自慢気に語っていたのを思い出します。

その後、カテドラルでもっとすっきりした演奏がなされ、それはLP、CDで公式に発売されましたが、こちらは、このプライヴェート盤しかありません。

公式録音ではないので、音の品位はすこし落ちますが、きれいな録音です。

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この演奏の原因になった飲み会のもようを再録しますね。

あれはいつのことだったか、大阪フィル合唱団での練習がおわったあと、パートで飲み会があった。ちょうど、その日は朝比奈のオッサンの総練習の日だったのだが、だれかが、声をかけたらしい、朝比奈御大がこの飲み会に参加したのである。この席で、ある団員が立ってしゃべりはじめた。だれだったか、おぼえていない。「我々は、朝比奈先生の下で、もう何年も歌ってきた。もう朝比奈先生の体臭を表現できるようになったと自負している。しかし、本当に残念なことだが、朝比奈先生の十八番である、ブルックナーをまだ一度もうたったことがない。ぜひともブルックナーをやりたい。それもテ・デウムなんかけち臭いこといわないで、ミサ曲第3番をやりたい。」と切り出したのである。皆、なにを言い出すのかとおもったのだが、考えることは実はみんないっしょで、すっかり盛り上がってしまった。しかし、一番心を動かされたのは、朝比奈御大だったのである。それから間もなく、ミサ曲第3番の演奏会をすることが決まった。朝比奈さんの気合の入り方は半端でなく、通常半年の練習なのに、これは1年かける。それも合宿もする、ということなのである。それで、実現した演奏会が1980年7月14日大阪フェスティヴァルホールでのコンサート。それはそれは感動的な演奏会だったのである。

この合宿、最初は朝比奈の息子がリハーサルをやったらしい。これで、すくなくとも練習の一貫性が途切れてしまったらしいのである。もしこれさえなければとの話もあった。

この演奏会、東京からかけつけた。前の方の席だった。しかし、そこから聞こえてくる声は、今までの大フィル合唱団から決してきけなかった、本当に純度の高いもので、本当に美しい演奏だった。鳥肌はたつし、涙は流れるし、実に感動的な演奏会だった。終わってから、打ち上げに参加したが、あの一番美しいベネディクトゥスの主旋律はバスだけしかない、とバスパートの人が誇らしげに言っていたのを思い出す。

このときの演奏は、大フィル合唱団がレコードにしている。これは本当に貴重な財産だ。その後カテドラルでの演奏は、東京のコーラスで、もっともっとすっきりした演奏である。

朝比奈さんの思い出

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ブルックナー ミサ曲第3番 朝比奈隆 大阪フィル 1983年 カテドラル

ブルックナーのミサ曲第3番ヘ短調の演奏である。

東京カテドラルの2回目のシリーズでのライブ録音

タワーレコードから、シングルレイヤーのSACDによるセットが発売されている。ものすごくいい音で楽しめます。

朝比奈隆&大阪フィル、他/ブルックナー:ミサ曲第3番

朝比奈隆(1908年7月9日生~2001年12月29日没)生誕100周年目を迎える今年、21年間再発されなかった貴重な音源を最新のマスタリングを施し再発売!!(ビクターエンタテインメント)

・ブルックナー:ミサ曲第3番ヘ短調WAB.28[原典版]
 中沢桂(ソプラノ)
 林誠(テノール)
 井原直子(アルト)
 勝部太(バス)

 大阪フィルハーモニー交響楽団
 T.C.F.合唱団(合唱指揮 辻正行)
 朝比奈隆(指揮)
 録音:1983年9月16日、東京カテドラル教会マリア大聖堂ライヴ(デジタル)
 [最新リマスタリング盤]

最初LPで出て、ずっと入手できなかった貴重なソースで、朝比奈さんの生誕100周年記念でCD化された。音質もとてもよい。

1980年に、大阪で一度この曲を取り上げているが、この演奏は、1983年に朝比奈さんの音楽生活50周年を記念して行われた東京での3日間かけたオール・ブルックナープログラムのひとつである。

朝比奈さんは、この会場になった東京カテドラルをいたくお気に入りのようだったが、これ以後、ここでは行われなかった。

この演奏会、私は、実際に聴いている。3夜にわたる演奏、全部聴くことができた。私がカテドラルで聴いていないのは、第1回の8番だけである。

最初に、ブルックナーの交響曲第3番のアダージョ第2番が演奏された。そしてこのミサ曲。

最晩年の演奏を聴いているなかで、この時期の朝比奈さんの演奏を聴くのは、実に好ましく、音楽が非常に元気である。なにより、音すべてに勢いがある。そのもっとも好ましい演奏のひとつではないだろうか。そして、音色が暖かい。

大阪での1980年の演奏と一番違うのは、合唱。TCF合唱団で、指揮者の辻さん自身もステージにたっていた。大フィル合唱団よりもずっと清涼は響きであるが、味わいという点では、こちらの方が蛋白。しかし、会場で聴いたときの印象と比べると、はるかに、熱い演奏である。実にすばらしい。

それと、やはり会場の残響が非常に長いのが特徴。だから、大フィルの音もすごく雄大に聴こえる。

最初のキリエから、全体のトーンが非常に前向きで人生肯定的で、すばらしく生命力があるのに、驚かされる。

グローリアも、非常に太い流れのまま、すばらしい音響空間となっている。ただ、残響が長いために、音がちょっと混濁気味。

クレド。力つよく、確信にみちた音楽である。コーラスの表現も深い。実に堂々とした非常に熱い音楽である。

サンクトゥス。線が太くて、比較的ぶっきらぼうで、あまり洗練されていなくて、非常に重量感のあるサンクトゥス。朝比奈さんらしいといえば、そういえる。

ベネディクトゥス。最初にチェロが非常に美しい旋律を奏でる。この美しい旋律が全体のトーンを決めている。非常に優雅な音楽だが、表現は、いつものように淡々としつつも、非常に味わいがある。

アニュス・デイ。非常に丁寧な音楽作りをしている。最後にふさわしく、非常に雄大な音楽に仕上がっているが、あたたかさと静けさももっていて、なんとも味わい深い。最後のコーラスで静かに終わるところは、非常に感動的である。

このミサ曲の演奏のなかでも、その生命力、幸福感という点から屈指の名演奏であるといえると思う。

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朝比奈隆 ブルックナーを語る (ビクター全集の特典CD)

ビクター全集の特典としてつけられたCDです。

いまは、復刻されて単独に入手可能です。

朝比奈隆 ブルックナーを語る

朝比奈さんと宇野さんの対談です。

ステレオできれいな音です。

ベートーヴェンは使命感、ブルックナーの場合は使命感かもしらんが、あまりにも系統的に聴かれていない、特別な存在、あのタイプの作曲家(あの作風)は以後あらわれなかった。完璧なロマン、様式を模索しているが、全体としてひとつの作曲家がひとつの特別の世界がある。意外とヨーロッパの演奏家もいいとこどりしている。全集でもあちこちにやったものを並べただけ。良かれ悪しかれ、やったものを全部記録しておきたいというビクターの申し出があったのでお受けした。

ブルックナーの音楽の特色

楽譜の書き方は、ベートーヴェン以来そうかわっていない。ブルックナーの場合は、曲にもよるが、1、2、3、6は、これやったら、どういう音になるか、譜面から出てこないので、やってみるしかない。こうやってもうまくいかないというか、失敗の積み重ねが必要。0番は、手をいれるというか、アーティクレーションが何も書いていないので、かなりいろいろやってみた。適切かどうかわからないが。それ以外はいじらないでやったが、いじらないでやるのが難しい。改訂版がでたのは、いじらざるを得ないのだろう。

ブルックナーの演奏としてきをつけること

マーラーやワーグナーはちゃんとした譜面だが、そのとおりひけばいいが、ブルックナーはどういう奏法をしたらいいか考えなければならない。スラーはずっとつづいているし、同じようなのがつづいているし、主題は長いし。管楽器はオルガンストップのような書き方、しかし息をするところがない。
最初やったのが1954年で、最初は、そういう模索をしていた。何十年もやっていたら、見当もついた。新しいオケとやるときの説得力もつけたし、自分用の楽譜もできた。昔貸し譜しか使えないときがあった。アメリカはワシントン条約を批准していないので、海賊版が多い。資料の点で、貸し譜だった。しかたなくて、写譜をした。みんなつかっているので、いろいろ書いてある。そのうち、パートでもいろいろある。今は、スコアは新しいものをアメリカ版で買う。今は楽になった。今は、全部指揮者の責任になる。写譜なら、前の人のあとがある。そんなことをしているうちに10曲はいってきた。

なんて、続いてます。

第0番

どうやっていいかわからないところが多い。
発想が非常に自由なところと、一般的な作風の両方あるが、特徴はあんまりでていない。

第1番

第1楽章の最初は、すばらしい。あれを思いついたから書いたのだろう。最後は古典派みたいで困っちゃう。はじめて自分の作風。

20台のころ、演奏を聴いたことがある。宝塚でやった。

メッテルに怒られた。生涯はじめてブルっクナー。

  あとで書き直したのは、違う作品になっている。

第2番

はじめのところ、なかなかいい。

ラインランドでオパーのオケでやった。最初のチェロ、意外に難しい。弾いているほうがむずかしい。ホルンが大変上手だった。そのときの鴛鴦はとてもよかった。ゲルゼンキルヘン。

ホルンで、自然音であがるのは、大変難しい。

あんまりヨーロッパではやらない。

オーケストレーションに慣れていないということですか。

ほしい動きをそのまま書く。それが必ずしもやりやすいかどうかわからない。

第3番

これも2番と同じような難しさがある。

この2つの曲は演奏家の責任である。いい演奏をすれば、作品のいい部分が伝わる。

コンパクトで作り上げた。

あんまりやりたくない。

すらすら出来ているが、

第3稿やったことがあるが、クリングスハイムが来て、いろいろしかられた。本屋にあったからとはいえない。実は自分の意見がなかった。普通の指揮者は、みなこれをやる。それで全部やろうと思って、全部やってみた。

ワーグナーの引用については

ワーグナーは偉大だと思うが、オーケストラに非常に特徴がある。中音域の楽器をよく使う。それ以外では、音楽そのものは意味があるが、オーケストレーションについては、あとに影響を残していない。ただ、大規模なこと、長大な音楽でやる、というのは影響があるかもしれない。演劇的には才能あり。オケとしては、マーラーとかリデャルト・シュトラウスは旨い。ワーグナーは影響を与えていないのは、むしろ、マーラーの方がブルックナーの影響があるように、ブルックナーの影響力がある。ワーグナーシンフォーニーというが、だんだん色があせてくる。

第4番

きのう、新日本フィルでやったが、技術的に完璧だった。

ロマンティっクという名前は?コントラストがはけしい、というような意味。

第5番

第4とはずいぶん違う。出来がよくなっている。

4と5はバロック奏法を意識しないといけない。とくに弦。オルガンからきている。

5はバロックの建築。

5が一番大シンフォニー。6から出直しをしたよう

第6番

第1は立派。フィナーレが魅力はない。演奏が悪いのかもしれない。通しでどうやっていいかわからない。東京交響楽団の6番はいいとこいっている、と思う。

リンツでブルックナーをやった。ウィーンのオケがやったことがない。惨憺たる出来だった。東京の方がいい、日本はわけがわからなくても一生懸命やるので、なんとかなる。

6番は、ちょっと新しい書き方を模索。第1の編拍子はおもしろい。

第7番

一番やりやすく、ポピュラー。

4楽章が短いが、展開部が倍くらいほしいね。すぐすんじゃう。根気がなくなったか。

第8番

本当に立派な作品。

目白で、8番やった。若い客ばっかりだった。大変な感動だったらしくて、若い客が泣いている。悲しいわけでないのに。泣いて泣いて、今度は、帰らない。30分近く舞台にいました。教会の十字架がなんともいえない。

このひと、精神的なものが多い。

弦のボーイングは、自分が考えたボーイングでないとうまくいかない。自分がヴァイオリンをやっていたのでできる。貸し譜はダメ。

フルトヴェングラーみたいな人がなぜ12小節ぬかすんでしょうね。

クレンペラーはフィナーレの展開部がない。ほかの人は真似しないように、ともいっている。

第9番

未完成でよかった。

曲としてすばらしい。

なんとも余情があっていい。

こころこめてやれば、あれにフィナーレはいらない。

2楽章がデモーニッシュ。

原典版がいい。

フルトヴェングラーに会わなかったら、レーヴェのをやっていた。あれは助かった。まったく違うものになってしまう。

決してやさしくないが。

最後にひとこと

ブルックナーに限らないで、ベートーヴェンでも同じだが、大作曲家がいて、誰が偉いということはないが、精神的に対象になるのは、ベートーヴェンよブルックナーだろう。

この二人に圧倒的に、日本の聴衆が多い。

こういう音楽をもとめている。日本の聴衆はすばらしい。感動して興奮するということが、あまりない。日本は、中学生、高校生が来るんだ。すばらしい。

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ブルックナー 交響曲第9番 朝比奈隆 新日本フィル 1980年 カテドラル ビクター

これは、東京カテドラルシリーズのライブで、XRCDで再発されている演奏と同一です。

朝比奈 ブルックナー 交響曲第9番

これは、東京カテドラルで最初に行ったライブシリーズの第2回目であり、公演のときには、いろいろ物議をかもしたものである。第1回のロマンティックは、非常にパカスカと気持ちのよい演奏だったのに対し、これはあまり乗り切れない、と思った若者が多かったのである。それで、おわってから何人かマニアがあつまり宇野さんを囲んでいろいろ話をした。若者たちは、今日の演奏は不満だとの声が多かったのである。そうしたら、宇野さんは、今日の方がロマンティックよりずっとよい。このよさ、若い君らにはわからんだろうな、と言ったのである。で、その時にアンチ宇野をたくさんつくってしまった。宇野さんは、その前からブルックナー協会誌にわるい演奏は撲滅しようと言っていたので、そんなの感じ方は各人の自由ではないか、と主張する若者の反感を買っていた。というわけで、物議をかもした演奏なのだが、(そのとき、私も不満に思った一人なのだが)いま聴いてみると、これ、なかなかいい演奏なのである。)

残響がすばらしこともあるが、きわめて分厚い音色が楽しめる。

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ブルックナー 交響曲第8番 朝比奈隆 大阪フィル 1983年 カテドラル2 ビクター

この演奏は、東京カテドラルの2回目の演奏会のライブで、XRCDで再発されている演奏と同じです。

朝比奈 ブルックナー 交響曲第8番①

朝比奈 ブルックナー 交響曲第8番②、第1番

この演奏会は、東京定期演奏会で3つのプログラムを東京カテドラルで連続して演奏するという暴挙の一部です。これは、最初CDで単発されました。

この3つの演奏会は、幸い全部聴いています。とくに、この第8番は、1980年のチクルスの最後の演奏会を聴き逃がしていることからも、まさにリベンジでした。

この録音、すばらしいです。私は、どうしても、この教会の長い残響で聴くのが大好きなのです。とくに大フィルのちょっと荒い音が見事に美しく変身するのです。

朝比奈さんの第8番の演奏は、ほとんど非常にレベルが高いです。録音しているもの、みんなレベルが高いです。オケもいつもなぜか好調なのです。朝比奈さんの棒もこの曲の場合、けっこうわかりやすいのです。自信のあらわれでしょう。私は、朝比奈さんの指揮で、この曲の生演奏を20回近く聴いていますが、そう感じました。

今回、あらためて、この演奏を聴いて、すばらしいと思いました。カテドラル、なつかしいです。
録音が本当にきれいです。残響、ものすごく長いのですが、録音ではちょうどよくて、まろやかな音になっています。とりかた、うまいです。

朝比奈さんらしい、人生肯定的な、すばらしいブルックナー演奏です。聴いていて幸せな気分になります。

第1楽章、最初から純度の高い演奏をしています。音が澄んでいます。音楽もきれいに流れます。

第2楽章、とてもきれいに音楽が流れます。変に重過ぎず、ずばらしいです。

第3楽章、比較的あっさりしていますが、ホールの響きがきれいで、非常に美しい音楽を奏でています。非常に心がこもっていますが、後年のものとくらべると力がはいっているのに、音楽が軽く感じるかもしれません。後半のもりあがりは本当にすばらしいです。これが、ハース版なのがうれしいですね。全部の旋律がきけますから。22分以降のクライマックスも、ホールのせいで、音がやわらかいですね。やはり、この部分は、最晩年のものにはかないません。あの壮絶さはなくて、もっと健康的です。しかし、そのあとの音のやさしさは何とすてきなんでしょう。

第4楽章、ゆったりした足取りで、ホールの響きを大事にして弾いています。ここでは、金管楽器が見事にきまっています。全体に響きが非常にのっており、音に勢いもあります。最後は圧倒的な迫力でおわります。

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ブルックナー 交響曲第7番 朝比奈隆 大阪フィル 1983年 カテドラル2 ビクター

これは、東京カテドラルの2回目の演奏で、XRCDで再発されているものと同じ演奏です。いまは単独で入手できます。

朝比奈 ブルックナー 交響曲第7番

東京カテドラルにおける1983年のシリーズでの演奏会。

このときは、わずか4日で3演奏会、それも7,8の交響曲とミサ曲第3番を演奏しています。それも東京定期演奏会として行われたものです。

当時はタフだったですねえ。

私は幸い、全部の演奏会に行きました。

東京カテドラルは、相当残響が長いのですが、この録音は、たいへん上手で、音がかぶりません。残響がきれいにはいっています。その分、オケの音もきれいに聴こえます。

朝比奈さんとしては、ブルックナーはこの第7が一番演奏回数が多いのです。だから、こなれた演奏が多いです。これも非常にすばらしい演奏です。第7といえば、あの聖フロリアン盤ですが、あれば神のなせる業で、何から何まで特別です。あれは、すべてが別格。

朝比奈さんは、ここの場所を気に入っていたようなのですが、これ以降実現しませんでした。宇野さんが反対したからでしょうか。

録音は非常にすばらしいです。XRCDになったものは、すごい情報量です。

第1楽章

最初からテンポがはやいです。すっきりした表現です。きれいです。大阪フィルの音とは思えません。音楽がなかなかきれいに流れます。あの聖フロリアン盤はものすごくゆっくりですが、あれは特別で、朝比奈さんの7番はだいたいこのテンポです。中間部はなかなかねばりのある表現です。全体的に表現がこなれていて、よどみがないです。第1楽章コーダは、例によって超スローテンポです。

第2楽章

静かなのと、音が比較的弱いのがめずらしい。そのうち乗ってくるが、かなり旋律の動きも固いところがあるが、ホールがうまくはたらいて、きれいに聴こえます。比較的表情がおとなしい。

第3楽章

重量感と表情豊かさをもった、なかなかすばらしい演奏です。残響もうまく利用しています。

第4楽章

かなり自由な表現でぐいぐい進む。オケがけっこう疲れてきたのか精度がさがってきているが、ホールトーンがうまくそれを隠す。一気にフィナーレにすすむ。

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