ブルックナー 交響曲第7番 朝比奈隆 東京交響楽団 1980年 カテドラル

東京交響楽団との第7番。東京カテドラルでのライブ録音。

今回、タワーレコードの企画ものとして久しぶりに再発されたもの。

タワーレコードから、シングルレイヤーのSACDによるセットが発売されている。ものすごくいい音で楽しめます。

これはナマでも聴いているし、LPをもっているので、LPを購入直後も聴いているのだが、ずいぶん久しぶりに聴く。アナログ録音の最後の世代のもので、ものすごく音がよい。この教会の長い残響がきれいに入っている。

これは、聖フロリアンの表現に近い。さすがに残響が長いこともある。晩年の朝比奈さんの第7番は、60分そこそこの演奏が多いのだが、フロリアンやこれは75分ほど要している。

弦楽の表情が最初単調ではあるのだが、だんだん乗ってくる。聖フロリアンよりは、各楽器が良く聞こえる。弦の響きが大阪フィルのものよりもずっと太い。そんなにデリカシーのある表現ではないが、教会の長い響きがそれをうまくカバーしている。あの聖フロリアンの音というのは、まず奇跡と言ってよく、よくもあれだけのデリカシーのある音が当時の大阪フィルから出たものだ、とよく思う。金管のバランスが、聖フロリアンのものよりも、ずっと強い。全体的に音が濃い。

しかし、聴き終わって非常に充実感がある。

この演奏会は、ラストで残響が残っているうちに、拍手がはじまってしまい、朝比奈さんが背中で強い抗議をしていた。「何ということをしてくれるのだ」と言っているように感じたものだ。

この録音では、そこは、リハーサルの音源が使われていて、最後の拍手がない。

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東京カテドラルにおけるブルックナーシリーズ 1回目 1980年

ブルックナーの演奏には、残響があったらどれだけいいだろう。

という発想で企画された演奏会のシリーズです。

このシリーズは、1980年と1983年に行われました。

最初の企画は、異なるオケによるものでした。

第4番 日本フィル 5月12日

第9番 新日本フィル 6月4日

第5番 東京都交響楽団 9月3日

第7番 東京交響楽団 9月13日

第8番 大阪フィル 10月24日

この企画は、梶本音楽事務所によるもので、当時私の友人が梶本にいたので、チケットを入手したのですが、最初のころ、売れなくて大変だったそうです。

それでも、演奏会そのものは、満員でした。

私は通しで買っていましたが、残念ながら、最後の第8番は、仕事でかけつけたときは、あの神がかり的なオヴェイションの最中でした。

この演奏は、最初、LPでカテドラルシリーズのセットで発売されました。

しかし、CDでは、バラバラになっています。このシリーズの発想は、どうしてもその音響にあるので、まとめてセットにした方が、一貫性があります。

今このシリーズは、

第5番、第9番がヴィクターの全集に入っています。

第4番、第7番、第8番は、タワーレコードからセットで発売されています。

タワーレコードから、シングルレイヤーのSACDによるセットが発売されている。ものすごくいい音で楽しめます。

第5番、第9番が、XRCDで出ています。

これについても、個々の演奏については、ひとつずつ書く予定にしています。

最初、第4番を聴いたとき、あの長い残響の快適さは忘れません。

とくにロマンティックの第3楽章のあのホルンの響きが天上からふってくるのです。

このカテドラル教会の響きはものすごく長く、確かに全奏部分では、何がなんだかわからなくなります。しかし、このひびきにつつまれる体験は貴重でした。

ギュンター・ヴァントの録音でもリューベックの第8と第9があり、あれもものすごい残響で、本人が気に入らなくて再録音していますが、私は、あの旧録が好きです。

このシリーズ、今聴いても圧倒されます。非常に表現意欲はつよく、面白い演奏が多いです。各曲オケが全部別ですが、朝比奈トーンになっているのがまた興味深いところです。

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