ジャンジャンの交響曲全集の最後に録音されたのがこの第5番。
1978年1月25日、大阪フェスティヴァルホールにおける実況録音。私は、この演奏を実際に聴いている。
朝比奈さんは、この曲の演奏がもっとも難しいということで、最後まで残していたのである。ジャンジャンの全集には、このことについての朝比奈さんの文章が載っている。
これは、ジャンジャンの録音の最後だということで、私もけっこう気合がはいっていた。それで、大阪フェスティヴァルホールのボックス席をとったのである。それも中央の。このホールでは、最高の席である。こういう席がとれたのも幸運であった。
しかし、私は、この生演奏を聴いて、楽しめなかったのである。
実は、この席がよくなかったのかもしれない。音がダイレクトに届かないのである。ある種のもどかしさが残った。そして、当時の私にとって、この曲はまだ理解不能だったのである。はじめて、おもしろいと思ったのは、その後のザルツブルグ音楽祭のカラヤン指揮ウィーンフィルのFM放送を聴いて、そして、朝比奈さんの演奏で本当に感動したのは、1980年のカテドラル公演である。当時、私は、クナッパーツブッシュなどのLPで聴いてはいたのだが、曲そのものになじめなかった。
今、こうして、録音で聴けるわけであるが、非常にすばらしい演奏なのである。
朝比奈さんとしては、これよりも前で東京で大成功しているし、全集のしめくくりとして、確信をもって臨んだ演奏会に違いない。
当時のアナログ録音もすばらしく、雰囲気もよくでている。
第1楽章、非常にゆったりと進む。堂々としていて、厳かである。比較的静かに聴こえる。第2主題になっても、基本的に非常にゆったりしている。テンポがはやくならない。金管楽器のレベルが、やはり今よりもずいぶん低いが、弦は、比較的ダイナミックの幅が大きい。
第2楽章、非常に悠然とした表現。晩年のものよりも、ずっと表現が自由なのと、むしろやわらかさがある。
第3楽章、朝比奈流スケルツォの表現。テンポがゆっくり目でずしりと重い。これは、当時から同じスタイル。きわめて、まじめな表情である。晩年のものは、もっと楽しく演奏している。トリオのところにはいると、子供の声らしきものが聞こえるのはご愛嬌。
第4楽章、非常にゆっくりと静かにはじまる。前の楽章の回想シーンがつづく。フーガのはじまりから、だんだん熱を帯びてくる。どんどんのってくる。そしてコラール。このコラールが、どうしても金管の実力の限界を感じるが、善戦している。弦がしずかにでてくるところが感動的。それからは、ずっとエネルギーをもちつつ、圧倒的な迫力をもって終わる。
晩年の演奏と比べると、自由度が高いともいえるが、音楽するパワーを感じる反面、楽しさは後年の演奏に譲る。晩年は、もっと音楽が透明になり、愉悦のこころが加わる。
しかし、基本的なスタイルはほとんど変わっていない。それだけ、朝比奈さんのブルックナーとの出会いは、本当に幸福そのものであったということだろう。
・交響曲第5番変ロ長調 WAB.105(ハース版)[78:25]
拍手:0:38
第1楽章:21:30
第2楽章:17:28
第3楽章:14:33
第4楽章:24:54
拍手:5:11
録音時期:1978年1月25日
録音場所:大阪フェスティバル・ホール
録音方式:ステレオ(ライヴ)