朝比奈さんのベートーヴェン交響曲全集・選集 まとめ

ここで、朝比奈さんのベートーヴェンの交響曲全集について整理してみます。チクルスは9回やっていますが、録音されたのが8回です。
ただし、第8回の分は、演奏が原則として2種あります。
ほかにNHK交響楽団、倉敷音楽祭のものが全曲ではないですが、あります。

全集 第1回 大阪フィル 学研 1972/3 LP のちにCD化
全集 第2回 大阪フィル ビクター 1977/8 LP のちにCD化
全集 第3回 大阪フィル ビクター 1985 LPとCDが同時
全集 第4回 新日本フィル フォンテック 1988/9 CD、SACD、映像DVD全集あり
全集 第5回 大阪フィル キャニオン 1992 CD
全集 第6回 大阪フィル キャニオン 1996/7 CD、SACD、映像DVD全集あり
全集 第7回 新日本フィル フォンテック 1998/9 
全集 第8回 大阪フィル エクストン 2000 CDバラ、SACD全集
全集 第8回 大阪フィル エクストン 2000 完全版SACD
選集 NHK交響楽団
選集 倉敷音楽祭 1989/1996

第2回のものは、最初CDになるときに、第5番がチクルスで演奏されたものではないほかの演奏になっていました。最近再発されたものは、もとのものに戻りました。第2回は荘厳ミサとハ長調ミサもついています。この第2回目のものについては、第9とハ長調ミサは、私も合唱で参加しています。実際に生で聴いたのは、第8回のだけです。
第8回は、原則として2つの演奏の組み合わせ、たとえば、サントリーとシンフォニーというようになって2枚組で出ていました。のちに片方だけとってSACDのセットになりました。

朝比奈さんのファンなら、全部欲しいところですが、

とくに素晴らしいのは、第2回、第4回、第8回だと思います。
もちろん、第1回もおもしろいです。
そのほかのものは、演奏の歴史を聴くにはいいですが、いまから聴くとすれば、4つかな。

大阪のローカルオケとしての第1回。
東京での演奏もあり、日本のメジャーとなったのが、第2回。
新日本フィルはやはりオケが違うので、全然スタイルば違います。
最後のものは、やはり完成度が高いです。

ものによって入手が難しいものがありますが、朝比奈さん生誕110周年以降、順次再発売されています。
第1回、第2回、第4回、第5回、第6回、第7回、第8回は、入手可能です。

第5回は2020年4月にタワーレコードから再発されました。

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朝比奈隆とベートーヴェン

朝比奈さんは、生涯9回のベートーヴェンツィクルスをやった。

それで、録音された全集が7種ある。7種あるといっても、CDとDVDの両方あるものもあるので、形式的にももっとたくさんある。

これを全部聴いてみようと思う。

ブルックナーについては、過去に書き溜めた文章があったので、それをそのまま、あるいはちょっと改訂して使っているが、ベートーヴェンは、すべて書き下ろしになる。ということは、全部、今、聴くのである。

最初に最後のものを聴き、そして、最初に戻ろうと思う。

最後のもの2000年のツィクルス。

これは、大阪で行った演奏、東京のエロイカについては、全部生で聴いているのである。私は、朝比奈さんのベートーヴェンをあまり生では聴いていない。

第9については、朝比奈さんは、生涯251回指揮をした。私は、朝比奈さんの棒で、12回くらい歌ったと思う。豊中での演奏会、あとサントリーホールで2回ほど。それから、東京都響で6,7を聴いた。それ以外は、最後のシリーズくらいである。ヴィクターの最初の全集については、9番を歌っている。

朝比奈さんのベートーヴェンの交響曲全集は、7つあるのだが、いろいろ注釈が必要である。

生きているときは、簡単に調べることができたが、今は、けっこう難しくなっている。やはり亡くなって10年という月日は長い。

第1回目 学研 1973年

これは、学習研究社が録音、7枚組10000円のセットで出たのが最初である。
第9のみライブで、あとはめずらしくレコーディングである。
これは、CDでバラ売りで、ほかの会社から一旦でた。
また、グリーンドアからセットで出た、
そして、タワーレコードで、リマスターして、すばらしい音で蘇った。

朝比奈さんの最初の全集は、メジャーレーベルは手をださなかったのである。

第2回目 ビクター1回目 1977年

ようやくメジャーレーベルが動き出す。これは、すべてライブ録音である。LPでひとつずつ出た。最初が運命。これで、エロイカが宇野さんが大絶賛した。ステレオ最高のエロイカと言っていた。
この全集は、荘厳ミサとハ長調ミサも同時に録音されている。ハ長調ミサは、私が出演している。
特典で全部がおさまる立派なケースが準備された。

この演奏、2回目にCDでセットになったとき、運命が別の演奏になっていた。
その後に出たときは、オリジナルに戻った。

第3回目 ビクター2回目
この全集は、LPとCDで同時に出た。LPの全集はこれが最後である。
比較的話題にされることの少ない全集である。

第4回目 キャニオン1回目 

第5回目 新日本フィル 1989年 これはDVDもある。あとで、SACDで再発。
これだけオーケストラが違い、音色も大フィルとは異なっている。

第6回目 キャニオン2回目 DVDもある。このDVDはマルチアングルが売りだが、あまりに高いので、これだけは買っていない。音はSACDで再発、

第7回目 EXTON 2000年
この年齢になって、クレンペラーを意識して、かなりテンポがはやくなり、すっきりした演奏になっている。7
(最晩年のクレンペラーはものすごくテンポが遅いが、壮年期はけっこうはやい)

これは、最初ことなる2つの演奏をセットにして、1曲ずつだした。たしか第8だけ1つしかないが、あとは2種の演奏。
それに、DVDのセットがある。
最後に1つだけを選んだSACDのセットがある。

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ベートーヴェン 交響曲第3番 朝比奈隆 ベルリン・ドイツ交響楽団 1989年

朝比奈 ベルリン エロイカ

あらたに発売された朝比奈さんのヨーロッパでの公演のライブ。

最初の音からして雄大。ホールの響きがすばらしい。
演奏のスタイルは、日本でのとほとんど変わらないが、オケが違うので、音色が違う。それでもけっこう野暮ったい音で、やはり朝比奈サウンドなんだろう。ものすごく丁寧に弾いているので、マッシブな力がすごい。

ついに発見! 朝比奈隆1989年ベルリン芸術週間ライヴ
ベルリン・ドイツ響との『エロイカ』! デジタル録音
ヨーロッパ・ライヴ第1弾

「1994年、私が朝比奈隆をシカゴ交響楽団に招くことを決意したとき、当時私はオーケストラの総裁であったが、音楽監督バレンボイムを説得する要があった。彼は朝比奈がどんな指揮をするか全く知らなかったので。私が朝比奈のブルックナー交響曲第8番のレコードをかけると、バレンボイムは即座に承諾した。そして優れて観察力の鋭いコメントをした。朝比奈はフルトヴェングラーのリハーサルに立会い彼と話をしたことがあると私が言うと、バレンボイムは『実のところ、彼の指揮は私に同時期だけれど別のドイツの巨匠-クナッパーツブッシュをより強く思い起こさせる』と答えた。この言葉を私は常に覚えている。このディスクの『英雄』交響曲を聴くとき、この言葉こそまさに的を射たコメントである」
ヘンリー・フォーゲル(元シカゴ響総裁)のライナーノートより

当演奏は日本でもFMで放送されたものです。そのアプローチは同年の新日本フィルとの名盤となんら変わるところはありませんが、ベルリン・ドイツ響(当時はベルリン放送響)のソリスティックな部分の妙技や音色の味わいの濃さには抗し難い魅力があります。朝比奈と同オケとの共演は放送収録を含めて複数回に及びますが、この演奏会が最後の共演となりました。新聞批評は真っ二つに割れたと言われておりますが、鳴りっぷり豊かで構えの大きい演奏は朝比奈ファンなら納得の名演であることは言うまでもありません。スケルツォ冒頭の極端な遅さなど朝比奈が自分の解釈を名門オケで試しているかのようです。この年ベルリン芸術週間は第39回目。7月に亡くなったカラヤンを偲ぶ追悼演奏会も含まれた豪華版でした。2ヵ月後には壁崩壊という劇的な変化の真っ只中のベルリンで、まだまだ元気一杯の巨匠朝比奈が渾身の力を込めて振った『エロイカ』の登場です。朝比奈ヨーロッパ・ライヴ第1弾。英語・日本語・ドイツ語によるライナーノート付。(東武トレーディング)

【収録情報】
・ベートーヴェン:交響曲第3番変ホ長調op.55『英雄』
 第1楽章:アレグロ・コン・ブリオ [20:22]
 第2楽章:葬送行進曲(アダージョ・アッサイ) [18:27]
 第3楽章:スケルツォ(アレグロ・ヴィヴァーチェ)&トリオ [06:52]
 第4楽章:フィナーレ(アレグロ・モルト) [13:10]
 ベルリン・ドイツ交響楽団
 朝比奈隆(指揮)

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朝比奈さんの魂が指揮をした、2001年12月30日の第九

これは、2007年12月30日にMIXIに書いた日記です。

お盆なので・・・

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きのうは朝比奈さんの命日だった。
なくなった日は、大阪フィルで若杉さんが第九を振っていた。その演奏がおわって自宅にかえり、翌朝はやくスイスに旅行中だった歯科医のA氏から国際電話があり、朝比奈さんの訃報を知る。それから、いろんな人からメールが入った。その日の夜は、やはり大フィルの第九だったのだが、前日とはまったく違い、朝比奈さんの大きな遺影がかざられており、若杉さんも喪章をつけて演奏に臨んだ。前日とはまったく違う響きがした。私はその日の感想文を、朝比奈さんの魂がそこにいて指揮をしているようだ、と書いたものだ。その日の掲示板に書いた感想を再録してみる。

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昨日、本日とフェスティヴァルホールの第9演奏会に行ってきました。
昨日は、朝比奈さんが病気療養中で、新年には回復見込みというふれこみだったので、若杉さんとしても単なる代役という感じだったのでしょうか、朝比奈さんとはちょっと違う第9を、という感じ。コントラバスを左奥に配し、きちりとしているが、重量感は不足。この配置だと2楽章がきれいに右から左に音が流れるので、なるほどと再確認した次第。音のつくりはとても丁寧に扱っていた。音色も透明感があり、スカッとした印象。客の入りも超満員ではないもののほとんど埋まっていた。観客の反応もけっこうよかった。朝比奈さんとは別の楽譜を使っているみたいだといっていた観客もいたが、ベーレンライターではなく、ブライトコプフだった。とにかく何十年も朝比奈ばかりだったのだから、けっこう新鮮に響いた、というところ。

本日は、入口の案内に、かんたんに訃報がでており、昨日のように病気療養中の大きな看板とくらべると、目立たないものだった。しかしみんな知っている。開演前に、いつもならコンマスは遅れて入るが、最初からはいっていた。そろったところでアナウンスがあり、朝比奈さんに黙祷をささげた。観客のなかからすすり泣きが聞こえていた。アナウンスでは、大阪フィルの創立者と紹介していて、音楽監督とは言わなかった。観客はきのうより若干すくないくらい。当日券あり。けっこういっぱい。大阪で3000人のホールが2日とも埋まるのは大変なこと。若杉さんの演奏は、昨日とだいぶ印象が違い、非常に熱のこもった感動的な演奏でした。昨日と同様に左奥にコントラバスを配置していたが、音楽の印象は大きく異なり、非常に重量感もあった。昨日とまったく同じ振り方をしていたけれど、とても気合が入っていて、音に強さがある。演奏スタイルが朝比奈さんのに似ているという印象すらある。(昨日はそんな印象なかった)オーケストラも非常に一生懸命に弾いていた。朝比奈さんのスタイルをより丁寧にしたような感じの演奏で、まるで朝比奈さんの魂がそこにいてともに演奏しているのではないかとの印象すらある。コーラスのなかには、はいったとき(3楽章の前に入る、これは朝比奈スタイルと違う。ソロはコーラスの前)から、もう泣いている人がいたけれど、コーラスはなかなか力強いもので、泣きながら歌っているという感じではなかった。音色もいつもより透明感があった感じ。たいたい第9のコーラスパートは器楽にまったく同じ旋律があるので、コーラスを丁寧に振らなくてもできるが、若杉さんは声楽を得意にしていることもあるのか、本当に丁寧につけてました。昨日は、ちょっと違ったスタイルでという感じでしたが、本日は無事葬儀委員長をつとめあげた、という感じ。なかなか紳士的な対応でしたし。(前からポスト朝比奈は若杉という話はあったが、実際どうなんだろう。)

最後の蛍の光は、昨日はちゃんとやったけれど、本日はなしでした。終演後、名古屋のときに知り合ったファンは、俺今年中に死ぬかもしれない。何もする気が起きない。といっていた。大阪の多くの聴衆は、必ずしもすべてが朝比奈の第9を聞きにきているわけではないですが、帰り道など、朝比奈さんの話題が多く聞こえていました。朝比奈さんは朝比奈さんの音楽を離れて話題になる有名人ですね。

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あとになってわかったことだが、この30日は、朝比奈さんのパート譜を使ったそうだ。その意味では、たしかに、朝比奈さんが、魂になって指揮をしていたのだ。

このとき指揮をした若杉さんも、すでにこの世にいない。

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