ブルックナー 交響曲第7番 朝比奈隆 大阪フィル 2001年

ブルックナー 交響曲第7番

朝比奈さんの最後のブルックナーシリーズ。ハイブリッドによる再発売。生誕100周年ということで、あらためて発売されたもの。SACDであるが、HQでステレオだけ。やはりマルチがほしいと思っていたのだが、この音を聴くと納得してしまう。すばらしく美しい響きである。

朝比奈隆の奇跡のシリーズではなくて、フェスティヴァルホールにおける定期演奏会。これも実際に聴いている。録音は、シンフォニーホールのと比べると、最初はデッドに聴こえるが、すぐに慣れる。

朝比奈さんは、7番を何度も演奏しているし、録音も多い。なんといっても聖フロリアン教会での演奏がすばらしいが、この演奏最晩年のものだが、テンポがはやい。ひびきとしては、ほかの録音とくらべると聖フロリアンのものに一番近いかもしれない。オケの実力は、やはりこの30年で相当向上している。何よりも音の純度が非常に高く、すっきりした表現だが、じっくりとした味わいがあり、実に感動的な演奏。こんな演奏だったかなあ、と今ちょっと意外な感じがしている。

朝比奈さんが、最後に到達した、空前絶後の至福の世界である。この年の終わりに亡くなってしまうのだが、このころは、まだ元気だったような気がする。

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ブルックナー 交響曲選集 朝比奈隆 大阪フィル EXTON 2001年

朝比奈さんが亡くなる直前に、大阪で行われた朝比奈隆の軌跡というシリーズで、ブルックナーの交響曲が取り上げられました。

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演奏されたのは、5,8,9の3曲。このほかに、別の企画で4番が演奏された。あと、定期演奏会で7番が演奏されています。

キャニオンから発売されているのは、このうち、4,5,7,9で、8はこのシリーズではなく、サントリーで2日間おこなわれたものです。 朝比奈隆の軌跡は大阪の朝日放送で録画され、放送もされました。DVDの発売予告がありましたが、発売されていません。9番の映像のみEXTONから出ています。

なお、ほとんど同時期に、フェスティヴァルホールでの定期演奏会で8番を、そのすぐあとに名古屋で8番を演奏しています。

朝比奈さんにとっては、最後のブルックナーのシリーズ。9番が演奏されたあと、名古屋のチャイコフスキーの演奏が生涯最後のものになりましたが、その次の大阪での定期は3番が発表されていました。その楽譜の版が話題になっていましたが、棺に入れらえてしまいましたので、どの稿なのかわからないままになっています。この演奏会は、外山雄三がかわり、内容はシューベルトのグレイトでした。

というわけで、シンフォニーホールでの8番は、CDメディアでは出されていません。テレビでの放映はされており、これも非常にすばらしい演奏でしたが、東京の分が発売されてます。

同時期の名古屋の演奏は、私がきいた8番では、最高のもので、これこそ一生の思い出になる超絶名演でした。朝比奈さんがなくなったあと、DVD-オーディオとCDの抱き合わせの形で発売され、その発売形態が非難の的になってしまいました。

最晩年の朝比奈さんは、クレンペラーを意識したということで、非常にすっきりとして、そしてテンポのはやい、贅肉のとれた演奏が特徴です。

最後の第9番は、映像にもあっていて、もうヨボヨボで見るのもつらく、また演奏もかなり不安定です。

しかし、それ以外は、非常にすっきりした名演になっており、この年になって、この境地に達したという、すばらしく完成度の高い演奏が記録されています。

とくに、SACDとなって出てきたものについては、ものすごく音が美しく、ちょっと信じられない境地です。

交響曲第4番 シンフォニーホール 朝比奈隆の軌跡
交響曲第5番 シンフォニーホール 朝比奈隆の軌跡
交響曲第7番 フェスティヴァルホール 定期演奏会 生涯最後の大阪での定期演奏会
交響曲第8番 サントリーホール 東京定期演奏会
交響曲第9番 シンフォニーホール 朝比奈隆の軌跡 生涯最後のブルックナー演奏

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ブルックナー 交響曲全集 朝比奈隆 大阪フィル キャニオン

3回目のブルックナー交響曲全集は、キャニオンで録音されました。
第7番から発売されましたが、全集にするという予告は見覚えがなく、急にはじまった記憶がありますが、ビクター盤が中途半端だったので、とてもうれしいニュースでした。そして、非常に高水準の全集ができました。

ブルックナー 交響曲全集 朝比奈隆 キャニオン

これは、何度も発売されています。

1回目 録音の都度、個々にCDばら売り

2回目 セット

3回目 HDCDで安くしてばら売り

4回目 ハイブリッドSACDマルチチャンネルばら売り

5回目 セット

6回目 ハイブリッドSACDのセット

録音メディアの進歩をそのままうけて、非常にすばらしい音響です。

1,2,3,6は、大阪フィルハーモニー会館でのセッション録音

そのほかは、ライブです。

第8番が1994年当時、伝説の名演といわれていました。

それと、スタジオ録音の4曲が、これが最後の録音ですが、どれもきわめて高水準の演奏です。

個々のコメントは以下に

交響曲第1番
交響曲第2番
交響曲第3番
交響曲第4番
交響曲第5番
交響曲第6番
交響曲第7番
交響曲第8番
交響曲第9番

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ドヴォルザーク スターバートマーテル 朝比奈隆 大阪フィル 1974年 

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大阪フィル合唱団のデビューコンサートである。このLPには、ベートーヴェンの第9の第4楽章がフィルアップされている。この演奏は、大フィル合唱団としての最初の第九のライブである。ドヴォルザークの演奏のときは、最初に未完成が演奏された。

私が、大フィル合唱団に入ったのが、この団体の創立のときで、1974年4月である。ちょうど、大学に入学したときである。この前の年に、第九合唱団として公募をしていたが、私は浪人中だったので、自重していた。大学に晴れて合格したので、入団したのだ。当時、オーディションはなく、誰でも入れたので、500人もいた。その後、ふるい落としのオーディションがあったが、私は幸い一軍だった。

大フィル合唱団は、朝比奈ファンのかたまりである。朝比奈さんの指揮で歌えることを至上の喜びとする人たちばかりである。最初に取り上げた曲は、この曲だったが、私は、はじめて聴く曲だった。

この演奏、まだ声にまとまりがない。当時の練習は、朝比奈のオッサンの長男がやっていたが、この人声楽の専門家でもないので、いろいろ大変だった。そのことは、後年、本人の告白がある。中丸さんの本、オーケストラ、それは我なり-朝比奈隆 四つの試練にその記述がある。

何にしろ、これで、大フィルのコーラスが始まったのである。朝比奈さんは、コーラスつきの大曲をやりたがっていたが、いつも合唱団の頼むのが大変だったらしい。それで、自前で持つことになった。この団体は、寄せ集めで核がなかったので、アサヒコーラスを吸収して、その核としたのである。このアサヒコーラスの出身者は、本当に熱心で、今でも現役でがんばっている人がけっこういる。大フィルだけでも35年間である。一番の親分格の方は、朝比奈さんよりも早くに亡くなってしまった。この方が入院したとき、朝比奈のオッサンは、見舞いに行っている。すごく親しい古くからの同士なのだ。

この合唱団に入った意義は大きく、私は、朝比奈のオッサンと個人的なつながりをもつことができたのである。まだ、そんなに全国的に有名になる前だったし、私はオッサンの大学の後輩だったので、かなりいろんな接触を持つことが出来たのである。オッサンをけしかけて、コンサートで取り上げてもらった曲もある。マーラーの6番だ。パーティのとき、散々けしかけた。オッサンに絶対合っているから、やってよ。それが直接のきっかけかどうかわからないが、影響はしていると信じている。

大フィル合唱団の実力が飛躍的に向上するのは、朝比奈さんの長男が去って、秋山和慶指揮でカルミナブラーナをやったときである。そのときの練習は何と手塚幸紀氏。この年は、手塚氏がベートーヴェンの第九もやったのだが、このときの成果もたいへんなもので、その年の朝比奈さんのビクターのレコーディングの演奏は、この手塚氏の練習による貢献度が大きい。

このレコードは、大フィル合唱団の出演料かわりに、制作されたものである。基本的には出演者に配ったのであるが、演奏会などでも売られていた。音質は、そんなによくはない。

意図的に音を落としているかどうかわからないけれど、ブルックナーの0番の日本初演のとき、シューベルトのミサ曲第5番をやった。このシューベルトも自主制作盤があるが、同じ日の公式録音のブルックナーがものすごくいい音なのに、シューベルトは貧しい。同じ機械を使っているんではないのだろうか。テープの回すスピードから違うのかもしれないが。

ちなみに、この第4面の第九であるが、大フィル合唱団として、最初の第九の演奏である。私はこの演奏ではじめて第九を歌ったのであるが、ものすごく感動した。とくに、最後のアッチェルランドは、まるでフルトヴェングラーのような演奏だったが、もう鳥肌がたった。そして、大歓声。これは一生の記念になる演奏会だった。演奏の質は、その後のビクターのレコードになったものの方がはるかにいいのだが。

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