ブルックナー 交響曲全集 朝比奈隆 大阪フィル/東京都響/東京響/新日本フィル ビクター

大手レコード会社は、ブルックナーを体系的に録音する機会を逸してしまい、ジャンジャンに先を越されてしまったのですが、日本ビクターがその後、目白の東京カテドラル教会のライブをメインにして、その後の個別の録音を行いまとめたセットです。

ブルックナー 交響曲全集 朝比奈 ビクター

この全集は、現在バラで復刻され、入手しやすくなりました。

この全集ができるその前提として、朝比奈さんのすべてのコンサートをレコーディングしよう、というプロジェクトがはじまっていたわけです。ビクターのあとは、キング、キャニオン、EXTON,フォンテック、いろいろな会社の録音がされました。その後大フィルも出すようになりました。

東京カテドラルの演奏がベースになっていて、それに単発ものをくっつけているという構成です。ある時期のブルックナーですが、一貫性がないのが難点です。ただ、全盛期の演奏だけに、基本的に水準の高い演奏です。カテドラルは、2回目を優先、1回目からは、5と9を採用されましたので、4番ははいりませんでした。この4番、ある意味記念碑的な演奏だったのですが。ただ、この第1回目のカテドラルでこの全集にはいらなかった演奏は、タワーレコーとから非常に廉価で出ました。

朝比奈さんの全集では第0番がはいっている唯一のものですが、最初に発売されたときは、世界で最初だという触れ込みでした。ハイティンクの方が先のような気もしますが。

スコアは、朝比奈さんは基本的にハース版です。9番は、ハースがないので、オレル版です。

第3番については、ハース版がないので、全集ごとに版が違います。これは、ノヴァークの第2稿です。
ジャンジャンは、エーザー版、キャニオンのは、ノヴァーク第3稿といわれていましたたが、改訂版でした。それで、ついに実現しなかった2001年の定期演奏会の版が話題になっていました。このスコア、バカ息子が棺にいれてしまったらしく、わからないのですが、第1稿だったということなのですが。息子も一応音楽家だから、わかっているはずだろうけども・・・。

全集については、最初にまとめて出て、のちに追悼盤となって再発されました。再発売でリマスターされています。

これから、全部のレビューをしますので、今の時点で聴き直します。

今回聴くのは、最初に出た全集です。

なお、私が、この録音になった実際の生演奏を聴いているのは、

第0番、第5番、第7番、第8番、第9番です。

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第0番 大阪フィル 1978.6,5 大阪フェスティヴァルホール

第1番 大阪フィル 1983.1.29 東京文化会館

第2番 東京都響  1986.9.11 東京文化会館

第3番(ノヴァーク第2稿)大阪フィル 1984.7.26 大阪フェスチヴァルホール
 
第4番 大阪フィル 1989.2.17 大阪フェスティヴァルホール

第5番 東京都響 1980.9.3 東京カテドラル第1回シリーズ

第6番 東京交響楽団 1984.1.28 東京文化会館

第7番 大阪フィル 1983.9.13 東京カテドラル第2回シリーズ

第8番 大阪フィル 1983.9.14 東京カテドラル第2回シリーズ

第9番 新日本フィル 1980.6.4 東京カテドラル第1回シリーズ

0.5.9がアナログ録音

そのほかがデジタル録音

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朝比奈隆 ブルックナー 交響曲全集 2回目 ビクター盤 ミュージックグリッド復刻

復刻専門メーカーのミュージックグリッドから、ばら売りがされています。
ただ、全集をそのまま1枚ずつバラにしていますので、曲によっては、2枚にまたがっていますので、要注意。

朝比奈 ブルックナー 交響曲第5番①

朝比奈 ブルックナー 交響曲第5番②、第0番

朝比奈 ブルックナー 交響曲第2番

朝比奈 ブルックナー 交響曲第3番

朝比奈 ブルックナー 交響曲第4番

朝比奈 ブルックナー 交響曲第6番

朝比奈 ブルックナー 交響曲第7番

朝比奈 ブルックナー 交響曲第8番①

朝比奈 ブルックナー 交響曲第8番②、第1番

朝比奈 ブルックナー 交響曲第9番

朝比奈隆 ブルックナーを語る

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ブルックナー 交響曲第5番 朝比奈隆 新日本フィル 1992年 DSDリマスター

朝比奈 ブルックナー 交響曲第5番

朝比奈さんの生誕100周年記念シリーズの1つ。新日本フィルのFONTEC盤。DSDリマスタリングというのがウリ。これは、昨日立川の山野楽器で購入。このリマスタリングがいい結果をもたらしているというので、さっそくきいてみる。このシリーズは、全体的に録音の評判がよくないが、そのの中で一番録音が悪いとされていた、ブルックナーの5番からききはじめる。

1992年9月2日、サントリーホールでのライブ。この演奏会は、実際にきいている。新日本フィルが朝比奈ブルックナーのシリーズを行い、5,7,8を取り上げた。これ以外に4番は定期演奏会で取り上げている。私は、このうち、シリーズの3曲をきいている。あとは、だいぶあとに行われた3番。新日本フィルのブルックナーは、大阪フィルのものとくらべると、音程はしっかりしているし、正確に弾かれているが、大阪フィルとの演奏のような、親密さからくる独特の雰囲気はあんまりない。オケの音が澄んでいて明るい。

ライナーノーツが金子さんとの対談になっていて、譜例もたくさんあり、むちゃくちゃおもしろい。以前読んだことのある文章なのだが、読み入ってしまう。

さて、CDの音だが、たしかに以前のものよりはっきりくっきりしているし、第一音が悪いなんてとても思えないいい音である。DSDマスタリングの成果なのだろうか。CD製作の技術の進歩もすばらしく、デジタルメディアにしては25年も持つなんておどろくほど長生きである。このCD,もともと演奏はすごいが録音は駄目というものだったが、これで録音がよくなってしまったのだから、もう決定的な名盤の誕生といっていい。技術の進歩がもたらした名演の誕生である。

ゆったりしたテンポで、非常に幅の広いというか、スケールの大きな演奏で、最晩年のものとは違う力強さを感じさせる演奏。非常に風格がある。一気にきかせてしまう大きな流れがある。

全体的に、弦楽器が非常に力をいれたボーイングをとり、かなり音を長く保つ奏法をしている。それが、いつもより顕著な気がする。

ものすごい重量感があり、それがとくにフィナーレになってすごさが増す。金管楽器のパワーもすごいものがある。あとになるほど凄みが出る。倍管になったあとのコーダのすさまじさは、鳥肌がたち、涙がボロボロこぼれる壮絶なる音の饗宴である。

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ブルックナー 交響曲第7番 朝比奈隆 新日本フィル 1992年 DSDリマスター

朝比奈 ブルックナー 交響曲第7番

朝比奈~新日本フィルのブルックナーのDSDリマスターの2枚目。第7番。これは実際に聴いている演奏。新日本フィルのチクルスで、5,7,8の三曲が取り上げられたもの。
1992年9月8日、サントリーホールでのライブ。この演奏は、実際にきいている。

やはり、大フィルとは、音色がだいぶ違い、透明度が高いのと、ちょっと粘りがあるような印象がある。

音が思った以上に太く、雄大な音楽が奏でられる。第1楽章もゆったりと太く、表現意欲が非常に強い。楽器のバランスも大フィルのとは、ちょっと違う感じがする。

第2楽章も、とても雄大。弦楽の分厚さが目立つ。録音の影響もあるだろうが、ものすごいエネルギー感。微妙ではあるが、けっこうテンポが動く。高揚感がすごい。

第3楽章は、やはり朝比奈調重量級スケルツォだが、中間部なんか良く流れるし、かなり盛り上がる。表現意欲満々。

第4楽章。比較的軽くなりやすいこの楽章も非常に立派な表現。音がなりきっている。オケも非常に乗っている。

この新日本フィルの第7番は、朝比奈さんのほかの7番と比べると、かなり線が太くて、雄大さがあり、表現意欲があるということでは、最右翼だと思う。

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ブルックナー 交響曲第4番 朝比奈隆 新日本フィル 1992年 DSDリマスター

朝比奈 ブルックナー 交響曲第4番

新日本フィルでは、ブルックナーのチクルスをやったのだが、それは5,7,8の3曲。それ以外に、同時期に定期演奏会で取り上げたのが、この4番で、同時期のものとして、セットで発売されたのである。演奏の計画としては、4曲セットで行われたが、この4番だけ定期演奏会になったようである。

1992年5月13,15日(ライヴ)東京文化会館、オーチャードホールの2つの会場での録音。これは実際には聴いていない。

今回のシリーズの中では、会場が違うこともあるだろうが、かなり響きが違う。かなり残響が多いが、ホールトーンを重視するというより、フォルテッシモのときに音が少々にごる。

演奏のスタイルとしては、かなり重厚なつくりで、またマッシブな力がある。非常に迫力に富んだ演奏である。オケのトーンは、やはり大フィルよりは透明感があり、きちんと弾いているのはいつもと同じ。ほかの新日本フィルとの演奏と比べても相当パワフルな演奏の1つと思う。

第1楽章からして、相当パワーが入った演奏。後年のものとは違って、相当力強い。一気に進んでしまう。

第2楽章は、最初のチェロのテーマも十分厚い響きをもっており、これも後年のものと比べると、ずいぶん強い演奏。木管も、へんな表情というのがなくて、ストレートな表現。

第3楽章は、朝比奈さんのスケルツォ表現がいつもそうであるように、比較的ゆっくり目で、重量感があるもの。今回は、主部の最後のところで、かなりテンポがはやくなる等、相当いじっている。

第4楽章も最初からマッシブな響きがすばらしい。勢いもある。数ある朝比奈さんのロマンティックの中では、もっとも力強い表現だろう。録音はちょっと飽和気味である。ここでも、けっこうテンポは揺らしており、必ずしもインテンポではない。

しばらくぶりに聴いたのだが、こんなにすごい演奏だったかと、あらためて思う。

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ブルックナー 交響曲第8番 朝比奈隆 新日本フィル 1993年 DSDリマスター

朝比奈 ブルックナー 交響曲第8番

新日本フィルとのブルックナーチクルスの実況録音で、これがこのチクルスでは最後の演奏会だった。サントリーホールで5,7,8とやったのだが、5,7は近接していたが、これはずっと後だった。このシリーズは、全部コンサートでナマをきいている。4番は、定期演奏会。

録音:1993年2月16日、サントリーホール(ライヴ)

DSDリマスタリングの効果は大変なもので、非常にダイレクトな音になっている。昔はちょっともやもやした感じの音だった。

この8番、新日本フィルのだけあって、大阪フィルよりも音が透明なのと、非常にきちんと弾いているという特徴がある。また、朝比奈さんの表現は、かなり勢いに乗ったもので、かなりいじくっているところがあるし、すばらしいエネルギー感がある。最晩年の演奏よりも、音が太くて力強いように思う。

しかし、今こうやってききなおすと、不思議なものだが、実際に聴いたときの印象よりも、もっと普遍的なスタイルを感じる。それだけ、スタイルに一貫性があるということなんだろう。後年、非常にテンポが速くなるのだが、この時点がおそいか、というとそうでもない。

ライナーには、金子さんとの対談が載っている。実際の演奏例をもとに話されているので、何度読んでも実におもしろい。ここに、朝比奈さんは、8番はノヴァーク版でスタートしたが、名古屋大学のオケに客演したときに、ハースでやりたい、リハーサルは無制限だったそうだが、これですっかりハース版が気に入ってしまったようだ。この名古屋大学の記念碑的な演奏も昔きいたことがあるが、また聴いてみたい。

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ブルックナー 交響曲選集 朝比奈隆 新日本フィル

朝比奈さんは、新日本フィルの指揮顧問団の1人だったので、たびたび指揮台に登場した。とくにコンサート形式のニーベルングの指環は画期的な業績。ただ、あの指環のころは、朝比奈さんの健康は絶不調だったと、あとで本人からきいたことがある。

ところでブルックナー。かなり長期間にわたってとりあげているが、ここで話題にするのは、新日本フィルでチクルスをやったときで、これは、5番、7番、8番だった。その前に4番をやっていて、この4曲で1セット。私は、チクルスの3回のコンサートに行った。

このほかにちょっとたったときに、第3番をやった。これはたしか版がノヴァーク版だった。朝比奈さんは、3番は、いろいろな版を取り上げている。どれが、好きだったのか。

このシリーズは、フォンテックで録音され、映像もある。

このCDは、オケの音が非常に洗練されていて、とても状態がよい。朝比奈さんの新日本フィルのベートーヴェンもそうだが、音の純度が高く、とてもすばらしい演奏である。

録音があんまりよくなかったが、リマスターして、見違えるような音になった。

曲ごとの説明は、以下のリンクを

  ↓ ↓ ↓

交響曲第3番
交響曲第4番
交響曲第5番
交響曲第7番
交響曲第8番

朝比奈さんは、このツィクルスでは、第9番を入れていない。しかし、東京カテドラルの最初のシリーズで、第9番は、新日本フィルだった。

映像のセットがある。

朝比奈隆 ブルックナー 交響曲選集

タワーレコードから、SACDシングルレイヤーで再発売されます。

朝比奈隆 ブルックナー交響曲選集 新日本フィル SACDシングルレイヤー

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ブルックナー 交響曲第9番 朝比奈隆 新日本フィル 1980年 カテドラル

これも1980年の東京カテドラルのライブ。XRCD化。音はすばらしくよい。5番の方が、ダイナミックさが自然にとれているが。

この演奏も聴いているのだが、今回XRCD化されて、えっ、こんな演奏だったっけ、という印象を持つ。

この演奏会、ロマンティックのあとにあって、あういうパカスカいうのがなくて、いまひとつはっきりしない、どちらかというと、響きのうすい演奏だったように思っていた。

今、じっくりきいてみて、印象は異なる。実は、非常な名演奏だった、と思うのである。

まず、後年の演奏よりも、より改訂版の影響があるような、テンポの動きが顕著。晩年のは、もっと自然である。
相当、彫りが深い表情がある。
音の流れが太くかなり強い。これだけ、音響が充実している9番は、朝比奈さんの演奏では珍しいかもしれない。

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東京カテドラルにおけるブルックナーシリーズ 1回目 1980年

ブルックナーの演奏には、残響があったらどれだけいいだろう。

という発想で企画された演奏会のシリーズです。

このシリーズは、1980年と1983年に行われました。

最初の企画は、異なるオケによるものでした。

第4番 日本フィル 5月12日

第9番 新日本フィル 6月4日

第5番 東京都交響楽団 9月3日

第7番 東京交響楽団 9月13日

第8番 大阪フィル 10月24日

この企画は、梶本音楽事務所によるもので、当時私の友人が梶本にいたので、チケットを入手したのですが、最初のころ、売れなくて大変だったそうです。

それでも、演奏会そのものは、満員でした。

私は通しで買っていましたが、残念ながら、最後の第8番は、仕事でかけつけたときは、あの神がかり的なオヴェイションの最中でした。

この演奏は、最初、LPでカテドラルシリーズのセットで発売されました。

しかし、CDでは、バラバラになっています。このシリーズの発想は、どうしてもその音響にあるので、まとめてセットにした方が、一貫性があります。

今このシリーズは、

第5番、第9番がヴィクターの全集に入っています。

第4番、第7番、第8番は、タワーレコードからセットで発売されています。

タワーレコードから、シングルレイヤーのSACDによるセットが発売されている。ものすごくいい音で楽しめます。

第5番、第9番が、XRCDで出ています。

これについても、個々の演奏については、ひとつずつ書く予定にしています。

最初、第4番を聴いたとき、あの長い残響の快適さは忘れません。

とくにロマンティックの第3楽章のあのホルンの響きが天上からふってくるのです。

このカテドラル教会の響きはものすごく長く、確かに全奏部分では、何がなんだかわからなくなります。しかし、このひびきにつつまれる体験は貴重でした。

ギュンター・ヴァントの録音でもリューベックの第8と第9があり、あれもものすごい残響で、本人が気に入らなくて再録音していますが、私は、あの旧録が好きです。

このシリーズ、今聴いても圧倒されます。非常に表現意欲はつよく、面白い演奏が多いです。各曲オケが全部別ですが、朝比奈トーンになっているのがまた興味深いところです。

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