ブルックナー 交響曲第1番 リンツ稿 ハース版 朝比奈隆 大阪フィル 1977年 ジャンジャン

朝比奈隆 最初のブルックナー全集です。

これは、1977年1月24日の大阪フェスティヴァルホールでの実況録音。

私は、この第1番は、朝比奈さんの生演奏はついに聴く機会はなかった。この演奏会も知ってはいましたが、聴いていないのです。

さて、この第1番ですが、思い出話をひとつ。

これを買ってまもないときに、下宿でクナッパーツブッシュ大ファンという友人にブルックナーの交響曲第1番をきかせたのです。最初にノイマン指揮のゲヴァンとハウスの演奏を。そうしたら、彼はこれブルックナーの曲かあ?と言うのです。次にこの朝比奈さんの演奏をかけました。そうしたら、彼は、これ、ブルックナーや!と大声で叫びました。この朝比奈さんの演奏、最初から、ブルックナーの音がしていました。それがどういうものか、感覚的にかわからないのですが、まさにブルックナーの音。

きわめて優秀なアナログ録音です。ホールの響きがきれいに出ています。

第1楽章、比較的淡々と始まるが、しっかりブルックナーの音になっています。ぐいぐいと進んでいきます。ただ、オケとしては、洗練度がちょっと低いのが気になります。とくに金管。比較的思い切ってテンポをゆらして、自由な表現をしています。

第2楽章、無骨というか、素朴な表現。最初は、音のまとまりがない感じもする。だんだん熱気がでてきて、音のかたまりとなる。ただ、アンサンブルはいまひとつ。弦も歌がすくない。

第3楽章、朝比奈さんらしい、重さと迫力をもつ。ぐいぐいすすむ。ただ、旋律線が短く表情があまりない。トリオも、比較的淡々としている。

第4楽章,この楽章も淡々とすすむ。木管はデリカシーを感じるが、全体的に比較的一本調子というか、比較的あっさりしている。ただ、流れはきれいにでていて、最後まで一気に進む。

・交響曲第1番ハ短調 WAB.101(ハース校訂リンツ版)[46:59]
 第1楽章:12:28
 第2楽章:11:39
 第3楽章:09:14
 第4楽章:13:38
 拍手:1:19
 録音時期:1977年1月24日
 録音場所:大阪フェスティバル・ホール
 録音方式:ステレオ(ライヴ)
 オリジナル・マスターからのデジタル・マスタリング

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ジャンジャンのブルックナー交響曲全集 朝比奈さん最初のブルックナー交響曲全集

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ジャンジャン ブルックナー 交響曲全集

レコードというメディアが、日本でのクラシックマーケットに残した、おそらく最大の業績は、このディスクジャンジャンのブルックナーの交響曲全集ではないかと思います。

歴史的な意味は計り知れないです。ひとつのクラシックのブームをつくった立役者として、永遠に名前をきざむことのできる大偉業です。

これだけ、企画と演奏にすばらしく一貫性のある全集は、ほかにありません。朝比奈さんのブルックナーは、これ以降、全集としてもほかに2つ、選集もたくさんあるのですが、すべてがここから始まったのです。

当時、朝比奈さんの演奏は、非常に好評でしたが、最初の録音は学研のベートーヴェン交響曲全集、そしてメジャーレーベルはヴィクターのやはりベートーヴェンの交響曲シリーズです。当時、朝比奈さんのブルックナーはかなり評判だったのですが、レコード会社はその気になりませんでした。

ジャンジャンは、渋谷にあったスタジオですが、今はもうありません。跡地は、小さなホールと喫茶店になっています。

ここのオーナーの高橋氏が、朝比奈さんのブルックナーの演奏会に行き、大感激して、私財をはたいて、ブルックナーの交響曲全集を作ったのです。最初、LPのセットで限定500部でした。

高橋さんは、東京文化会館で朝比奈さんのブルックナーの演奏会を聴き、いたく感動したそうです。そして、上野公園から上野駅に下りる道で、その日の聴衆の反応を感じ、3往復もして、その日の数多くの聴衆もやはり同じ思いであることを知りました。そして、一大決心をしました。

最初は、大阪フィルではなく、東京のオケにしたらというアイディアもあったようですが、絶対的に大阪フィルでなければいけない、と高橋氏はゆずりませんでした。彼、信念の大偉業です。

そして、会場は、音響のいい、神戸文化ホールが選ばれました。

第7、第8、第9の3曲がまず録音されました。それ以外については、大フィルの定期演奏会、東京定期演奏会のプログラムに組まれ、実況録音されました。

最初の3曲を録音した段階で、高橋さんは、第8の演奏が気に入らなかったらしく、再録音をしました。この前の録音は、最近になって発売されましたが、とてもいい演奏ですが、最初に出た再録音の方が数段いいです。

この第8番の再録音は、すこしだけ聴衆をいれて録音しました。私は、これを聴きに行きました。神戸文化ホールで、聴衆は、一番後ろの席でした。オケは公開録音ですが、本番ではないので、私服でした。

この公開録音、すばらしい演奏でした。そして、演奏終了後、朝比奈さんは、コンマスの安田さんと握手をしていまい、解散してしまったので、これ一発勝負の録音です。一部修正はしていません。本当は、修正をする予定だったそうですが、朝比奈さんがそれをわすれてしまい、解散してしまったそうです。しかし、この演奏、修正する必要がないほどの完成度です。最終楽章の最初のテンポの乱れがあり、もし直すならそこでしょうが、これは修正しなくていいです。

そして、第2番も同じ条件で録音されました。私は残念ながら、この第2番はいっていないのですが、行った友人によると、聴衆の大部分は、この曲をはじめて聴いたのだけれど、最初の楽章だけで圧倒された、ということでした。このときは、ちゃんととりなおしをしたので、一部修正しています。

この公開録音という方法は、大成功で、このあと、ヴィクターのブラームスの交響曲全集がこのやりかたで録音されています。この録音のさなか、コンマスの安田さんがバイク事故で側溝にはまり亡くなるという大事件があり、大フィルは危機を迎えることになるのですが。

こういうふうに、最初の3曲と第2番が録音されました。それから、演奏会のライヴが録音されました。

私が録音された生演奏をきいているのは、第3番、第5番、第8番です。

個々の演奏はひとつひとつ全部書く予定ですが、この全集の特色は、ものすごい熱気がある、ということでしょうね。最後のころの大フィルとくらべて、下手だし、音も美しくないのですが、聴いていると、それ、すぐに慣れてしまい、その熱気ムンムンにやられます。

そして、

これ、すごーい

すごーい

すごーい

ということになってしまいます。

これほど、情熱に満ちた、そして生命力にあふれたブルックナー、ほかにないです。

本当にすばらしい全集です。

このLPは、最初、第8番のみ2枚組みで発売されました。そしてすぐに買いました。非常に発売枚数が少なかったのですが、私は、大フィルの合唱団のメンバーでしたから、予約できました。

そして、7,8,9の3曲がセットで発売されました。全部2枚に切っています。第9は3面ですが。それで、リハーサル風景がついています。このセットも購入しました。そして、8番ぬきという方法でも買うことができました。

最後に全集が出ました。第1番以外は2枚使うという、非常にぜいたくなカッティングでした。そして、7、8,9を買った人は、1から6だけという販売もしていました。このときに特典盤としてついていたのが、聖フロリアンのあの超絶的な第7番です。ただし、特典なので、1枚のカッティングで音のレベルはよくありません。あとのヴィクター盤が数段いいです。この全集、解説書がないです。簡単なデータと、朝比奈さんが最後の5番の録音のときに書いた文章だけです。

あとになって、第8番は再録だということで、最初に出た1枚が、もとの演奏ではないか、というウワサが出ましたが、私は全部持っているので、それは違います、と断定できました。

このプレスは、500部しかありません。高橋氏は再プレスを拒否したのです。いや1000部だったかもしれません。

これのCDは相当あとになって、かんたんな紙ボックスのもので発売されました。

それから、再生テープレコーダーを当初録音したのと同じアンペックスにして、グリーンドアから非常に立派なボックスいりのセットで出ました。これは非常に高価だったのですが、すぐにタワーとかHMVで大安売りされました。ここには、第8番の旧録音が含まれています。それにリハーサル風景がはいっていますが、あまり語りはありません。ここには、相当くわしい解説書がはいっています。ここで、いろんな事情がはじめて明らかにされました。

このなかの7,8,9については、ワンポイントとマルチと異なるマスターがあります。それで、最後のこのグリーンドアのものは、最初のLPとは、かなり印象が異なるものになっています。

このセットは、廃盤になっていますが、流通在庫や中古品はあると思います。
定価は約4万円と非常に高価ですが、流通価格は1万円台だと思いますが、変動します。
全集のみの販売です。

以下、データ
HMV HPより
各曲のコメントにジャンプします。
【収録情報】
DISC1
交響曲第1番ハ短調 WAB.101(ハース校訂リンツ版)[46:59]
 第1楽章:12:28
 第2楽章:11:39
 第3楽章:09:14
 第4楽章:13:38
 拍手:1:19
 録音時期:1977年1月24日
 録音場所:大阪フェスティバル・ホール
 録音方式:ステレオ(ライヴ)
 オリジナル・マスターからのデジタル・マスタリング

DISC2
交響曲第2番ハ短調 WAB.102(ハース版)[69:52]
 第1楽章:19:12
 第2楽章:18:30
 第3楽章:10:25
 第4楽章:21:45
 録音時期:1976年8月25日
 録音場所:神戸文化ホール
 録音方式:ステレオ(公開セッション)
 オリジナル・マスターからのデジタル・マスタリング

DISC3
交響曲第3番ニ短調 WAB.103(エーザー版)[57:38]
 チューニングと拍手:1:48
 第1楽章:19:41
 第2楽章:15:05
 第3楽章:06:57
 第4楽章:15:55
 拍手:1:57
 録音時期:1977年10月28日
 録音場所:大阪フェスティバル・ホール
 録音方式:ステレオ(ライヴ)
 オリジナル・マスターからのデジタル・マスタリング

DISC4
交響曲第4番変ホ長調 WAB.104(ハース版)[63:25]
 拍手:0:41
 第1楽章:17:17
 第2楽章:14:48
 第3楽章:11:06
 第4楽章:20:14
 拍手:2:40
 録音時期:1976年7月29日
 録音場所:東京文化会館
 録音方式:ステレオ(ライヴ)
 オリジナル・マスターからのデジタル・マスタリング

DISC5&6
交響曲第5番変ロ長調 WAB.105(ハース版)[78:25]
 拍手:0:38
 第1楽章:21:30
 第2楽章:17:28
 第3楽章:14:33
 第4楽章:24:54
 拍手:5:11
 録音時期:1978年1月25日
 録音場所:大阪フェスティバル・ホール
 録音方式:ステレオ(ライヴ)
 オリジナル・マスターからのデジタル・マスタリング

DISC7
交響曲第6番イ長調 WAB.106(ハース版)[59:13]
 チューニングと拍手:1:53
 第1楽章:17:44
 第2楽章:17:08
 第3楽章:09:17
 第4楽章:15:04
 拍手:7:27
 録音時期:1977年9月1日
 録音場所:東京文化会館
 録音方式:ステレオ(ライヴ)
 オリジナル・マスターからのデジタル・マスタリング

DISC8
交響曲第7番ホ長調 WAB.107(ハース版)[67:44]
 第1楽章:20:50
 第2楽章:23:10
 第3楽章:09:34
 第4楽章:13:10
 録音時期:1976年4月14日
 録音場所:神戸文化ホール
 録音方式:ステレオ(セッション)
 未発表オリジナル・マスターからのデジタル・マスタリング

DISC9&10
交響曲第8番ハ短調 WAB.108(ハース版)[84:26]
 第1楽章:16:00
 第2楽章:16:50
 第3楽章:26:59
 第4楽章:24:37
 拍手:4:57
 録音時期:1976年8月23日
 録音場所:神戸文化ホール
 録音方式:ステレオ(公開セッション)
 オリジナル・マスターからのデジタル・マスタリング

DISC11
交響曲第9番ニ短調 WAB.109(ハース版)[64:55]
 第1楽章:26:50
 第2楽章:11:27
 第3楽章:26:38
 録音時期:1976年4月22日
 録音場所:神戸文化ホール
 録音方式:ステレオ(セッション)
 新発見のオリジナル・マルチによるデジタルリミックス盤

DISC12&13
・交響曲第8番ハ短調 WAB.108(ハース版)[82:47]
 第1楽章:15:49
 第2楽章:16:38
 第3楽章:26:20
 第4楽章:24:00
 録音時期:1976年4月15、16日
 録音場所:神戸文化ホール
 録音方式:ステレオ(セッション)
 オリジナル・マスターからのデジタル・マスタリング

DISC14
・交響曲第2番ハ短調 WAB.102(ハース版)~リハーサル
 第1楽章:23:54
 第2楽章:05:56
 第3楽章:06:06
 第4楽章:14:18
 録音時期:1976年8月25日
 録音場所:神戸文化ホール
 録音方式:ステレオ(公開セッション)
 オリジナル・マスターからのデジタル・マスタリング

DISC15
・交響曲第4番変ホ長調 WAB.104(ハース版)~リハーサル
 拍手:0:41
 第1楽章:12:40
 第2楽章:16:05
 第3楽章:7:37
 第4楽章:23:02
 拍手:2:40
 録音時期:1976年7月29日
 録音場所:東京文化会館
 録音方式:ステレオ(ライヴ)
 オリジナル・マスターからのデジタル・マスタリング

DISC16
・交響曲第8番ハ短調 WAB.108(ハース版)~リハーサル
 第1楽章:08:19
 第2楽章:07:14
 第3楽章:21:47
 第4楽章:07:57
 録音時期:1976年8月23日
 録音場所:神戸文化ホール
 録音方式:ステレオ(公開セッション)
 オリジナル・マスターからのデジタル・マスタリング

DISC17
・交響曲第9番ニ短調 WAB.109(ハース版)~リハーサル
 第3楽章:54:59
 録音時期:1976年4月22日
 録音場所:神戸文化ホール
 録音方式:ステレオ(セッション)
 オリジナル・マスターからのデジタル・マスタリング

 大阪フィルハーモニー交響楽団
 朝比奈隆(指揮)

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ブルックナー 交響曲第9番 朝比奈隆 大阪フィル 1995年 キャニオン SACD

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朝比奈 ブルックナー 交響曲第9番

キャニオンでの朝比奈さんの3度目の全集をDSDマスタリングしてSACD化したもの。最初単発で、それから全集、それから廉価盤でHDCDになり、今回が4回目の発売。朝比奈さんの生誕100周年にあわせた再発で、音は格段によくなった。1995年4月23日、大阪、ザ・シンフォニーホール(ライヴ録音)これは、この全集の最後に発売されたもの。最初に入れたものが気に入らず、別の演奏会のテイクだったように記憶している。この演奏会も大阪のもので、当時東京に住んでいたので、ナマはきいていない。 全集でセットになったものは、リハーサル風景が付属している。

第9番については、ハース版がないので、原典版となっているが、オレル版である。ただ、ノヴァーク版でもほとんどかわらない。

朝比奈さんのブルックナーの第9番というのは、とくに実演では鬼門というか、なかなかコンディションのよいものは少なかった。しかし、最晩年のものは、非常に安定感もでてきた。オーケストラの実力の向上もその一因だろう。大阪フィルは、金管の音程や響きに問題があったが、このころには、見事解決している。

この第9番、実に雄大で、じっくりときかせる、超絶的な名演奏である。

第1楽章、かなり明るい音色ではじまる。主部にいたるまで、けっこうテンポが自由である。いつものことながら、強めのピッチカート。自信をもった足取り。第1主題は、太くゆったりとしている。非常に安定感がある。全体にわたり、表現の幅がひろくて、自由に演奏している。厳密な因テンポではない。

第2楽章、スケルツォ。非常にゆっくりしたテンポ。非常にくっきりとした表情。初期の録音とくらべ、圧倒的な重量感。トリオもものすごくくっきりとした弾きかただが、硬くはない。弦が非常に雄弁。管も安定している。思った以上に表情があかるい。

第3楽章、非常に太く、雄大にはじまる。いきなり金管も全開。すべての音に心がこもっていて、もう1分38秒のところの全奏で涙が出てくる。最後まで、これが持続する。一番最後のヴァイオリンはきちんと弾かれている。これが、あのシューリヒトに近づくの最後の演奏まで待たなければならない。

ライブだが、拍手ははいっていない、ということは、最後の部分は、ゲネプロのテイクであろうか。

朝比奈さんのブルックナーは、こういう最後の交響曲でも、豊かな生命力を感じさせるもので、とくにこういうブルックナーのような、音の洪水に身をまかせる曲だと、すばらしい幸福感につつまれる。

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ブルックナー 交響曲第8番 朝比奈隆 大阪フィル 1994年 キャニオン SACD

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朝比奈 ブルックナー 交響曲第8番

朝比奈さんの生誕100年を記念して、再発の企画がたくさんある。まずこのキャニオンのブルックナーとベートーヴェンのSACD、続いてエクストンのブルックナーのSACD。そのほか、CDのハイパーマスタリング盤で、キングのものがたくさん。

というわけで、まずキャニオンのブルックナーを1つ買ってみた。8番である。1994年、サントリーホールでの空前絶後といわれた演奏で、この演奏会は、生できいている。たしかにすごかったという記憶がある。

最初、レギュラーのCDで出て、それから廉価盤でHDCDで出て、今度は、フルプライスでのハイブリッドSACDである。同じ演奏を、ことなるフォーマットできくことができる。4番は、さらにアートン盤があった。

朝比奈さんのブル8は、この盤を取り出して聴くことは意外と少ない。まず、名古屋の演奏、それから、東京の最後の演奏となったエクストン盤、それとN響のものが多いだろうか。 しかし、今回久しぶりに聴いてみて、それはそれはすばらしい演奏だと認識をあらたにした。

音は、やはりSACDで、非常にレンジが広く、空間再現力はすばらしい。それよりも、ものすごいエネルギー感だ。こんなに、ど迫力のある演奏だったか、とあらためて思う。最晩年のものと比べると、ものすごく力強い。

楽譜は、ハース版である。朝比奈さんは、最初は、ノヴァーク版であったが、名古屋大学に客演したときに、ハース版を知り、それからハース一辺倒である。

朝比奈さんにとって、この第8番は、ブルックナーの交響曲のなかでも、演奏頻度が非常に多く、それだけ血となり肉となっているから、その共感度がなみはずれている。それだけでなく大阪フィルも数多くこなしているから、技術的にも洗練度が高い。
かなりたくさんのCDがでていて、どれも非常に完成度が高い。最初のジャンジャンのものから、最後のサントリーのものまで、どれもすごい演奏である。このCDは、1990年代の最高の演奏の記録である。

さて、朝比奈さんが登場して拍手で迎えるところから始まる。

第1楽章。最初からいきなり完成度の高い音ではじまる。とても洗練された響きだけでなく、ものすごく豊かで歌こころがある。何とすばらしい音楽だ。ほかの演奏では、けっこうゴツゴツした演奏になるが、さすがにこの曲はよくとりあげているからか、洗練度が違う。音も見通しがよい。勢いが違う。流れもある。実にすごい演奏だ。

第2楽章。まず勢いがある。けっこうゴツゴツしているが、ぐいぐい進む。洗練度も高い。チェロも旋律は流れるようには弾かない。そういうボーイングをしている。トリオは、きちりとしているが、ヴァイオリンの歌がすばらしい。

第3楽章、ブルックナーのもっとも感動的な音楽だと思う。かなり大きめの音でしっかりと弾きながらはじまる。太い、そしてなめらかではないが、非常に心のこもった熱いものを感じる。もう涙涙の連続である。とくに、5分41秒からはじまるチェロの旋律で、至福のときを迎える。そして、つづき、この圧倒的な音響のなかで、しばしわれを忘れる。

第4楽章、エネルギー全開ではじまる。足取りがしっかりした、堂々とした音楽。マッシブな力と、心のこもったあたたかい音楽が交差する。この演奏会、私は実際に聴いているが、ここになると、いつまでも終わってほしくない、という思いが募った。この幸福感に永遠にひたっていたい、と思ったものである。

最後、圧倒的な迫力をもっておわるが、拍手がちょっと間をあいて出てきている。拍手が何と13分も録音されている。聖フロリアン盤につづく悪乗りのようにも思えるが、私はこれを実体験しているので、懐かしささえ覚える。

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ブルックナー 交響曲第7番 朝比奈隆 大阪フィル 1992年 キャニオン SACD

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朝比奈 ブルックナー 交響曲第7番

朝比奈さんのブルックナーのSACD。ポニーキャニオンの第7番。ポニーでの録音では、これが第一弾。これが発売されたとき、3回目のブルックナー交響曲全集が出ると知り、非常に喜んだものだ。
1992年9月27-29日、大阪フェスティバルホールでのライブ録音。
これは、実演に接していない。新日本フィルのライブの直後の演奏。このあとに、このコンビは、ヨーロッパへ演奏旅行へ行った。

朝比奈さんの第7番は、聖フロリアン盤をはじめてとして、ものすごい量の録音が残されている。朝比奈さんとしても、もっとも演奏頻度の高いブルックナーの曲である。

ブルックナーの残したもっとも優美な音楽といわれる。

この演奏は、キャニオンによるブルックナー交響曲全集の最初をかざる録音である。

あんまり聴くことはなかったのだが、実にすばらしい演奏である。朝比奈さんののこした第7番のなかでも、きわめて上品なおもしろさをもった演奏だといってもいい。それに、響きが全体的に洗練されている。

聖フロリアンのテンポは異常に遅いが、日本ではこれくらいのテンポで演奏することが多かった。それで、響きがきれいで、流れがものすごくきれいな演奏である。

第1楽章、適度のひびきにのって、非常にきれいに音が流れる。テンポも比較的早めで、表現もなかなかしゃれっ気がある。全体的に響きが豊か。

第2楽章、こちらも響きが比較的明るく豊かさを感じる。ほどよく色気さえのった音色。響きにゆとりがあり、あたたかみがある。盛り上がり方が自然である。

第3楽章、朝比奈さんのスケルツォは重量級である。これは、思いのほかテンポが速いのと、響きが適当にあるので、迫力があるし、表情が楽しい。トリオも表情が多彩です。なかなかこういう表現なかったのでは。

第4楽章、非常に勢いのある、楽しげな表情のあるステキな表現が続く。大胆ながら、流れもあり、すばらしい表現である。

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ブルックナー 交響曲第6番 朝比奈隆 大阪フィル 1994年 キャニオン SACD

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朝比奈 ブルックナー 交響曲第6番

朝比奈さんのポニーキャニオンによる3度目のブルックナー全集から、第6番。これは1994年4月1-4日、大阪フィルハーモニー会館でのスタジオ録音。DSDマスタリングを施し、SACDとなり、すばらしく音質が改善された。2回目に出たHDCD盤を出してきて比較してきいてみたが、こちらの方がずっとナマに近く、音も自然である。全体の雰囲気がとても美しい。

私は、この6番のナマ演奏、朝比奈さんのタクトで聴くことはできなかった。なかなか演奏しないし残念であった。

この全集の中では、もっとも美しい演奏だと思う。6番のほかの演奏と違って、音が澄んでいるからか、線が比較的細めに感じ、いままできいていたブルックナーの6番とは、まったく別物の響きがする。

第1楽章から、非常に硬質な響きである。とてもダイナミック。

第2楽章は、ブルックナーが書いたもっとも美しい曲の1つだと思うが、朝比奈さんのアダージョの表現としては、これほど慈悲深い表現をしているのはないのではないか、と思う。安らかで、かつしみじみとした味わい。ほかの作品のアダージョのような思い入れたっぷりというのではなく、実に淡々とした枯れた味わいのアダージョで、こういう作品はブルックナーでは、この曲しかないと思う。NHKのあるドラマでこの曲が流れていて、非常に印象的だった。(稀代の性格俳優斉藤洋介主演で、車椅子にのった主人公。ヨッフム指揮のDGGのLPが回っているところが写っていた)

第3楽章も、低弦の響きがひきしまっていて、小気味がいい。テンポが中庸で、すばらしく安定感のある上に、それにのって生き生きとした音楽が続く。

第4楽章も、低弦が小気味よく始まるが、全奏になると、マッシブは迫力がすばらしい。そのまま全体をしめくくる。

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ブルックナー 交響曲第5番 朝比奈隆 大阪フィル 1994 キャニオン SACD

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ブルックナー 交響曲第5番 

キャニオンによるブルックナーの交響曲全集のひとつ。最初バラで、それから全部ひとまとめに、それからHDCDで廉価盤、そして、SACDで出た。

1994年6月27日大阪フェスティヴァルホールでの実況録音。

朝比奈さんは、この第5番が一番演奏が難しいといっていた。最初、ジャンジャンの全集を出すときに、最後の最後までとっておいたのである。しかし、朝比奈さんの表現の相性としては、もっともあっていう曲であると思う。

最初のジャンジャンのときから、圧倒的な演奏をしている。

この演奏は、1994年の大阪のもので、私は聴きにいっていないのだが、このあたりの東京での演奏はあほとんど聴いている。どれもすばらしい。

さて、この演奏、大阪フィルとしても非常に精度も高く充実した演奏である。

第1楽章、きわめてきちりとした演奏ではじまり、かなりかっちりした表現であるが、だんだん乗ってくる。かなり固めの音で直線的な音づくりである。

第2楽章、ごくゆっくりと丁寧に低弦のピッチカートに木管がのせてくる。ここらへんは比較的おとなしいが、弦のアルコになってとたんに表情が豊かになる。それからは、非常に厚みのある雄弁な音楽にかわる。中間部は、管の表情がなかなか楽しい。

第4楽章、おごそこにピッチカートではじまる。ここから、各楽章の回想をする。ベートーヴェンの第九みたいに。それがひととおりおわって感動的なコラールがある。ここのコラールのときに、残響が長いところだと、本当に神秘的に響き、そのあとに出てくる弦楽が絶妙にきこえるが、ここはデッドなので、比較的あっさりと出てくる。この雰囲気は、やはり東京カテドラルのあの響きがなつかしい。このコラールがあってから、大フーガ。この大きなうねりがつづいて圧倒的な迫力でクライマックスを迎える。最後は、倍管にし、圧倒的な大音量でおわる。

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ブルックナー 交響曲第4番 朝比奈隆 大阪フィル 1993年 キャニオンSACD

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朝比奈 ブルックナー 交響曲第4番

キャニオンでの朝比奈さんの3度目の全集をDSDマスタリングしてSACD化したもの。最初単発で、それから全集、それから廉価盤でHDCDになり、今回が4回目の発売。朝比奈さんの生誕100周年にあわせた再発で、音は格段によくなった。

1993年7月録音、3つの会場(大阪フィルハーモニー、大宮ソニックホール、サントリーホール)での録音を使っているという表示があるが、サントリーのものがほとんで、あとは修正用の音源ということである。

これとは別に同じ演奏のアートン盤があるが、これはサントリーホールのものの一発録り。ただ、この2つ、かなり音の印象は違う。材質が違うからであろうか、空気感は、これのCD層よりアートン盤が数段上である。

第1楽章、最初から全開であるが、音に勢いがあり、たくましい音楽である。ぐいぐい進む。こういう特徴は、ジャンジャン盤からあるが、それよりも洗練されている。しかし、かなりごつごつした音で、この曲のほかの演奏と比べると洗練度は低いかもしれないが、ものすごく聴き応えがある。とくにひとつひとつの音が遠慮なく力いっぱい弾かれているので、マッシブの力がすごい。

第2楽章、最初のヴァイオリンはやさいい響きだが、チェロがいきなり強い音なので、びっくりする。たての線がきっちりでていることもあった、きちりとした印象がある。ピッチカートがしっかりひかれ、流れるというような感覚があまりない。

第3楽章、かなりゆっくりはじまる。弦の土台に、管が朗々となる。かなりゆっくりでごつごつした感じがあり、多くのロマンティックの演奏とは違い、力強くゴツゴツとした印象。波のうねりも大きい。これが、最晩年になるともっと洗練されてくるのでおもしろい。トリオも、あまり流れることなく、きちんとした印象。

第4楽章、最初は、比較的軽めの音ではじまる。だんだんと音が大きくなってきてエネルギー全開モードになると、あとはぐいぐい進む。あとは、非常に充実した響きが続く。歌うとことは、かなり粘りのある表情である。基本的にゴツゴツした音作り。最後までエネルギーが途絶えず、圧倒的な迫力でおわる。

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ブルックナー 交響曲第4番 朝比奈隆 大阪フィル 1993年 アートン盤

朝比奈 ブルックナー 交響曲第4番 アートン

キャニオンでの朝比奈さんの3度目の全集は、 1993年7月録音、3つの会場での録音を使っているという表示があり、サントリーのものがほとんで、あとは修正用の音源ということであるが、これとは別にアートン盤がある。これはサントリーホールのものの一発録り。ただ、この2つ、かなり音の印象は違う。材質が違うからであろうか、空気感は、こちらが数段上である。

個々の楽章のイメージは、全集盤と同じであるが・・・。

第1楽章、最初から全開であるが、音に勢いがあり、たくましい音楽である。ぐいぐい進む。こういう特徴は、ジャンジャン盤からあるが、それよりも洗練されている。しかし、かなりごつごつした音で、この曲のほかの演奏と比べると洗練度は低いかもしれないが、ものすごく聴き応えがある。とくにひとつひとつの音が遠慮なく力いっぱい弾かれているので、マッシブの力がすごい。

第2楽章、最初のヴァイオリンはやさいい響きだが、チェロがいきなり強い音なので、びっくりする。たての線がきっちりでていることもあった、きちりとした印象がある。ピッチカートがしっかりひかれ、流れるというような感覚があまりない。

第3楽章、かなりゆっくりはじまる。弦の土台に、管が朗々となる。かなりゆっくりでごつごつした感じがあり、多くのロマンティックの演奏とは違い、力強くゴツゴツとした印象。波のうねりも大きい。これが、最晩年になるともっと洗練されてくるのでおもしろい。トリオも、あまり流れることなく、きちんとした印象。

第4楽章、最初は、比較的軽めの音ではじまる。だんだんと音が大きくなってきてエネルギー全開モードになると、あとはぐいぐい進む。あとは、非常に充実した響きが続く。歌うとことは、かなり粘りのある表情である。基本的にゴツゴツした音作り。最後までエネルギーが途絶えず、圧倒的な迫力でおわる。

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ブルックナー 交響曲第3番 改訂版 朝比奈隆 大阪フィル 1993年 キャニオンSACD

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朝比奈 ブルックナー 交響曲第3番

キャニオンでの朝比奈さんの3度目の全集をDSDマスタリングしてSACD化したもの。最初単発で、それから全集、それから廉価盤でHDCDになり、今回が4回目の発売。朝比奈さんの生誕100周年にあわせた再発で、音は格段によくなった。1993年10月3-6日、大阪フィルハーモニー会館(セッション録音)このシリーズで最高の演奏といわれている演奏。朝比奈さんは、3番の録音については、全部楽譜が違う。これは、最初ノヴァーク第3稿といわれていたが、のちに改訂版ということになった。

これは、ノヴァーク第3稿のパート譜をとりよせたら、改訂版の楽譜がとどいてしまったらしい。それで、第1楽章429から430小節のホルンの音が第2版の引用がある。

この3回目の全集が企画されたとき、とくにこの3番は朝比奈さん本人がしんどいということで躊躇していたが、1~3と6をレコーディングで行うことでOKしたらしい。

大阪フィルの2001年11月の定期演奏会で3番を取り上げる予定であったが、朝比奈さんが病気療養中で、かわりに外山雄三指揮でシューベルトのグレートだった。私は定期演奏会のチケットを持っていたので、この演奏会には行っている。なお、この11月には、初版を使うという話であった。このスコア、棺に入れて燃やしてしまったらしいが、棺に入れたのは、指揮者でもある長男千足氏だから、本人にきけばどの楽譜かわかるだろうに。

朝比奈さんのブルックナー3番の演奏で、今でも語り草になっているのは、1978年7月28日の東京厚生年金会館の大フィルの東京定期の演奏。ブルックナーをこよなく愛する友人はこれがベストだという。これの公式録音は残されていないが、CD-Rがあるようだ。見たことはないが。

このキャニオンの演奏は、公開演奏ではないので、ナマでは聴いていない。このキャニオンのものは、大半が大阪での録音で、実際にナマをきいているのは、4番と8番のみである。当時、コンサートを聴きに大阪に行くという知恵はなかった。

私にとっては、この3番は鬼門というか、ブルックナーの曲としては苦手にしていて、比較的聴く機会が少ない。楽譜がいろいろあるのに、あんまり熱心に違いを知ろうという気もおきない。嫌いというのではないのだが。最初に聴いたのはジャンジャンの録音になった大フィルの定期演奏会だった。周りはみな絶賛していたが、私はいまひとつ乗れなかった。

さて、この演奏だが・・・。
最初の音を聴くと、やはりライブではないので、緊張感がないまま突然はじまったような感じである。アンサンブルがあんまりそろっていない。といってばらばらという感じでもない。最初のうちは、音が比較的平板。ただ、音楽のつくりは比較的丁寧。そして、だんだんのってくる、という感じになる。第2楽章にしても、あんまり濃厚ではなく、比較的さっぱりしている。スケルツォ楽章がかなりテンポがゆっくりしているし、重量級の熱っぽい演奏になる。第4楽章は非常にむずかしい曲で、音の並びがスマートではないと思うのだが、この演奏はなかなか性格をきちりと描きわけている。ライブではないが、だんだん乗ってくるというスタイルの演奏。そして最後は、非常に力強く締めくくる。

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